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寝ている私の顔を誰か覗き込んでいるのか、少しだけ視界が暗くなった。


「ねぇ…」


良く聞こえないけど、誰かが私に話しかけているようだ。


「…い。起き…てばー」


言いながら私の肩をゆさゆさと揺さぶってくる。

もう、うるさいなー。折角気持ちよく寝てたのに。


「ん…」


しょうがないから起きてやると、そこは辺り一面真っ暗な世界だった。


「あれ…?どこ?ここ」


まだ覚醒しきっていない頭で周囲を見渡すが真っ暗なだけで特に何も見当たらない。

しかし、自分の姿だけははっきり見えた。

ここは…?夢、なのか?


「あ、やっと起きたね」

「は…?」


と、ふいに後ろから誰かの声がした。

誰だ…?こんな所に…。


まぁいい。とりあえずここが何処だか聞いてみよう。


「あの、すいません。一体ここはどこなんでしょ……うぇぇぇ!!?」

「何?何か顔についてる?」


私が思わず変な声をあげると、その人はあからさまに嫌な顔をした。

いや、てか…


「わ、私…?!」


何この人!!自分で言うのも何かだけど、すっごい私に似てるんですけどー!!?

え?何?何で?私がもう一人…?


「まぁ、‘私’っていうか…もう一人の‘桐沢琴音’かな?」

「…はぁぁぁ??!」

「だから何、そんなに驚くことか?」

「驚くに決まってるでしょうが!!てか何?もう一人の私?意味分かんないんだけど!!」

「あれ?知らないの?パラレルワールドの存在」

「パラレル…ワールド…?」


聞いた事くらいあるにはあるけど…。そんな突然言われても…。


「まぁ、説明めんどくさいから色々はしょるけど、この世界には桐沢琴音という人物が時空間に何人もいるわけよ」

「はぁ…」

「んで、私はその中の一人。アンタはそのオリジナルってわけ。はい、説明終わりー」

「ちょっ…!!それだけ?!」

「だからさー、説明めんどくさいから色々はしょるって言ったじゃん。聞いてなかった?」

「いや、聞いてたけどさ…」

「あ、言っておくけど、私に文句言っても何にも解決しないからね。私だって突然だったし」


そこまで言うと、もう一人の‘私’はわざとらしいため息をつく。

ため息つきたいのはこっちだって一緒じゃボケ!!


「そういえばアンタ、もしかして木の葉の里に飛ばされた?」

「え?あ、そういえばそんな所だった気が…」

「やっぱりな…」


もう一人の‘私’は、また大きくため息をつき、体ごと私に向き直ってきた。


「私さ、日本ってところに飛ばされたんだけど」

「日本…。にほ……っ!!えぇぇぇ!?」

「どうやらちょうど入れ替わっちゃったみたいだね」

「ちょっ…!!どーすんの!?ねぇ、これからどーすんの!!?」

「私が知ってるわけないでしょー?」

「そりゃそうだけどさ…」

「ま、なるようになるって」


そう言ってすぐによっこいしょと立ち上がると、もう一人の私は真っ暗な世界に向かってさらに歩き出した。

心なしか最初よりも少しだけ風景が明るくなっている気がする。


「待って!!何処行くの?」

「何処って…。帰る。日本に」

「はぁ?何言って――」

「半日しかいなかったけどさ、何だか面白そうな所だなって思って。しばらくあっちで暮らすよ」


もう一人の私はニコニコと呑気に笑いながら言った。

どんだけ勝手なんだこの人ォォ!!同じく‘私’とは思いたくないわ!!


「勝手な事言わないでよ!!私はどうなるの?」

「勿論、忍者として暮らすことになるけど」

「忍者?!無理だから!!数時間前まで平凡なただの学生だったのに!」

「大丈夫。分身の私に出来たんだからオリジナルにも出来るって」

「んな事信じられるわけないでしょうが!!」


そうこうしているうちにも風景が段々明るくなってきている。

それにつれて分身の私の姿も薄くなってきた。


「私に出来てアンタに出来ないわけないから。絶対大丈夫!!」

「そんな無責任な…」

「はぁ…。ま、時間も無いようだから最後に一つだけ」

「……?」

「何かあったら奈良シカマルって男に相談しな。必ず助けになってくれるはずだから」

「奈良、シカマル…?それってどんな…って、ちょっと待ったぁぁぁ!!」


私が喋ってる間にも分身の私の体はどんどん透けていた。そして呑気にこちらに向かって手を振っている。


「ちょんまげ頭に目つきの悪い男を探せばすぐ見つかるから〜」

「ちょっと!!まだ聞きたい事いっぱいあるのに…!」











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