お前は何のためにここにいる、と問う俺に彼女はいつものようにへらへらとしながらなんでだろーねーと笑った。彼女はいつだってそうだった。ふざけたことを言ってはティエリアに怒鳴られ、アレルヤに呆れられ、ロックオンと笑い合っていた。俺にはよく理解できない人間だったが、仲間である以上はある程度許容しなければいけない。その点ロックオンはマイスターたちへのフォローを忘れなかった。あいつなりに気を遣ってるみたいだから許してやってくれ、と憤慨するティエリアに言っていたのを今でもよく思い出す。彼女とロックオンはトレミーにいる間はよく一緒にいた。きっと恋人と呼べる関係にあったのだと思う。いつだかティエリアが不謹慎だなんだと呟いていた気がする。

ロックオンが目を負傷した時も彼女は笑っていた。片目なくしてやんの、と言ってロックオンと笑っている彼女の神経は俺には到底理解できないものだった。仲間が、それも彼女にとっては特別であろう人の痛みを笑う彼女は異質だった。だから、俺は少し眠ってくると言ってロックオンの側を離れた彼女にこっそりと着いて行ったのだ。そして彼女が部屋に入ってしばらくしてから中を窺った。彼女は相変わらずの態度で俺を迎え、刹那が来るなんて珍しいねわたし嬉しいよと笑った。だから俺は言ったのだ。お前は何のためにここにいる、と。理解ができなかった。どうしても。俺の問いに彼女は結局答えないまま、刹那の身長がわたしより高くなったら教えてあげるねなどといつものように子供扱いして俺の頭を撫でながら言うものだからその手を叩き落として俺は彼女の前から消えた。ああそうか、あれが最後の会話だったかとぼーっとした頭で考える。さっきまで見ていた夢は彼女の夢だった。底抜けに明るい彼女が出てきた夢だったのにこんなにも後味が悪いのは何故だろう。答えは簡単だった。彼女がいないからだ。この世界に彼女はいない。彼女が愛したロックオンも、ロックオンが愛した彼女もいない。4年前からいない。彼女から聞きたかった答えは宇宙に散り、俺の身長が彼女よりも伸びたのかどうかすらわからなかった。勝手に背比べしてきた感触は今だってはっきり思い出せるというのに。俺はあの頃子供だった。もしあの時大人であったら彼女の瞳が赤く潤んでいたことも、俺の質問で彼女の顔に影が落ちたことにも気付けただろうか。彼女を、そしてロックオンを助けることができたろうか。彼女が好きだった"たられば"の話が嫌いだったはずなのに4年経った今俺はそんなことばかりを考える。同時に痛くなる胸の奥と彼女を想う感情の正体が未だにわからない俺はまだ子供だ。
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