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「さー!帰るぞー!」
「名前ー、じゃあねー」
「うん!バイバーイ!」

同じクラスの女の子に手を振り教室を出る。
今日の私は最高に機嫌が良い。
なぜなら毎日5食限定の『ランチラッシュ特製ビーフシチュー』を食べることが出来たからだ!

授業のチャイムが鳴ると同時に駆け出し、学校の備品を少々傷つけてしまったために担任から小言があったけど気にしない。
ダッシュしたときに後ろの席の心操のプリントを吹っ飛ばしてしまい今度昼食を奢ることになったとか気にしない……くない。
財布が悲鳴をあげそう。

でも『ランチラッシュの特製ビーフシチュー』はそりゃあ美味しかった。
いや、美味しかったなどという言葉じゃ足りない。
あぁ!ボキャ貧な私が憎い!!個性を使った甲斐があったってもんよ!!

ルンルン気分で幼馴染を迎えにB組へ行くと、幼馴染は体操服に着替えていた。

「あれ!一佳今日居残りなの!?抜き打ちテストの点数でも悪かった!?」
「アンタと一緒にしないでよ名前。体育祭に向けてトレーニングするの」
「B組もう練習するの!?早すぎじゃない!?」

まだ1ヵ月も先なのに!ってヒーロー科は将来の事務所決めにも関わるから今から頑張らなきゃいけないのか。大変だなー就活。

「君は相変わらずリスザルみたいにキーキーうるさいね」
「ゲッ!お、お前は………………コピーマン!」
「物間だ!物間寧人!!いい加減人の名前くらい覚えろよ!」

コピーマン、じゃなかった物間は一佳の後ろの席に座っていたみたい。
一佳しか見てなかったから気付かなかった。

ちなみに物間も体操服を着ていた。

「本当、君物覚え悪いな」
「フフフ、筋肉は貯められるけど知識は貯めることはできんのだよ!」
「いや、自慢するところじゃねぇだろそこは」
「だまらっしゃい骨抜!」

いつの間にか近くに立ちツッコんできた骨抜をビシッと指をさす。

「何で骨抜の名前だけはっモガッ!」

わぁわぁ言っている物間の口を抑えたのは一佳だ。

さすが!やっぱB組でも姉御肌なんだね!

「物間もうやめなって。名前も人に指をささない」
「おっとこれは失礼!すまんね骨抜」
「あんま気にしてないからいい。つか今日の名字いつも以上にテンション高すぎだろ。そんなにビーフシチュー美味かったのか?」
「ななななな何故それを知ってる!?」
「食堂で『ビーフシチューヤッフウウウウウ』なんて言われりゃ誰だってわかる」
「え、やだ恥ずかしい!」
「食堂中に聞こえる声で叫んでおきながら何言ってるんだか……。アンタと幼馴染やめたいわ」
「そんなこと言わないでよ!私達ズッ友でしょっ!?」

ガシッと一佳に抱きつく。
一佳が個性を使って離そうとするも私が個性を使ってるからそうそう離れられない。
私達はずっと一緒だフハハハハ。

「ちょ!恥ずかしいから離せって!こんな下らないことで個性使うなよ!」
「もう幼馴染やめるなんて言わない!?」
「言わない!言わないから!!」
「よし!」

パッと腕を放す。

一佳はよく幼馴染やめたいわーなんて言うけどそれも愛情の裏返しって私分かってるんだから!

「ホント、個性は強いのに……"貯筋"なんてさ」

そう、自分で言うのもアレだけど私の個性"貯筋"は体を鍛えた分だけ筋肉を貯筋し、使うときには一気に身体能力が上がるという鬼強な個性なのだ!!

ただ、欠点は……

「使える頭が無いんじゃただの宝の持ち腐れだろ」
「ぐぬぬ、自分で言うのはいいけど人に言われるのは腹立つ!!許すまじコピーマン……っ!」
「だからやめろよそのダッサイネーム!」
「もう止めろ!また繰り返すつもりか!!」

間に入った一佳の一喝(あ、面白いかも)に冷静になる私達。
しかし、人のネーミングセンスをダサいって言うなんてどういうことよ!失礼しちゃう!!

まだ納得いかずおこな私を見て一佳がため息をついた。

「とにかく、これから体育祭まで放課後残るから名前は先帰っててよ」
「オッケー……それじゃあB組の皆練習頑張ってねー」

一佳や骨抜の他にもちらほら挨拶を返してくれたり手を振り返してくれる子がいて、ちょっとおこな気持ちが軽くなった。物間?あんなん知らんわ!!




時間を確認するためにスマホを取り出そうとブレザーのポケットに手を突っ込んだが、スマホが無い。

「……あ!教室の机に置きっぱだ!!」

今私がいるのは下駄箱のある1階で教室は3階にある。
早く家帰ってドラマの再放送見るつもりだったのに!

いや、まだ間に合う!!

「うおおお!!唸れ!私の豪脚!!」

とは言いつつも、個性を使わないとただのか弱い女の子なので走る速さはあんまり速くない。
個性使えば?とか皆簡単にいうけど全力ダッシュするのにどんだけランニングしないといけないと思ってるの!力加減て結構めんどくさいんだよ!

階段を2段抜かしで駆け上がる。
あ、だめちょっと足痛い。でもあともう少しで3階だし!!


「あっ」


個性を使わないで最後の段を踏み込もうとしたが、なんと階段のへりで足を滑らせた。

人間ピンチの時って時間がゆっくりになるっていうけど、本当にスローモーションで私のどんどん見えている景色が遠くなっていくのを感じた。

個性を使わなきゃとかたくさん考えているのに実際の体は動かない。
 

今日はラッキーだなって思ってたけど、そんなこと無かったわ。


まったく、なんて日だ!!



視界の端に階段のへりが写ったその時、胸にテープのようなものが貼り付き私の体は一気に3階へと引き上げられた。

私の体は宙に浮いていて、張り付いたテープの先には肘からテープが出ている黒髪の男の子がいた。
その男の子はテープを巻き取ると同時に私の体もその男の子のほうへと引っ張られていく。


「お、っと!!」


突然だけど、人が恋に落ちるときの音ってどんな音がするのか考えたことあるかな?

人によって違うのかもしれないけど、私は彼の右腕が私の体を支えてくれた音でした。

「おい大丈夫か?危なかったなー」
「は、はい……」
「今度からは気をつけろよー。じゃ、先急いでっから」

爽やかな笑みを浮かべて手を振る彼に私は何も言えず。

ただ、立ち尽くすだけだった。



名字名前、15歳。

多分、恋しちゃいました。


 



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