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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 電車とバスを何本か乗り継ぎ、見当をつけていた最初の病院に向かうとカメラを持った記者が数人立っている。ここに緑谷くんや他の雄英生が入院しているのは間違いないだろう。記者の視線には気付かないふりをして横切った。
 受付で指示された面会受付証にサインをする。念のために身分証明用として持ってきていた雄英高校の学生証は使うことなく、緑谷くんの病室番号を案内される。
 ノックをして病室に入る。両腕をギプスで固定して眠っている緑谷くんのそばにいたのは、木椰区の警察署で見かけた女性だった。

「朝早くにすいません。緑谷くんの友達で雄英高校1年C組の塚内赤音といいます」
「あ……出久の母です」

 緑谷くんのお母さんが憔悴しきった顔で立ち上がる。

「あなたが塚内赤音さんね。出久がよく話してるわ。せっかく来てくれたのにごめんなさい」
「いえ。あの、緑谷くんはまだ……」
「昨日ここに運ばれてからまだ目を覚ましていないのよ。そりゃあ、こんなボロボロじゃあねえ」

 緑谷くんのお母さんが彼の腕をさするように触れる。
 私ですら見ていられないと思ってしまう程、緑谷くんの姿は痛々しい。母親であれば尚更、その胸中を考えるだけで苦しくなってくる。

「高校に入ってから超パワーなんて突然変異した個性が発現して、おかげで毎日心配ばかり。……私か夫の個性を継いでれば、こんなことには、ならなかったかもしれないのにね……」

 震える声でそう言った緑谷くんのお母さんが、母に重なる。

「お母さんのせいじゃないです」

 思わず強くなってしまった語気に緑谷くんのお母さんが顔を上げた。
 目の下の隈が酷い。きっと夜通し起きていたんだろう。

「少し休んでください。何かあったらすぐに声をかけに行きます。緑谷くんも、きっと心配すると思いますから」
「……そうね。心配させちゃうわよね。そうしたら、悪いけどお願いしてもいいかしら」

 緑谷くんのお母さんの言葉に頷く。
 院内コンビニ隣のロビーにいると言って、緑谷くんのお母さんは病室を出て行った。


 緑谷くんのそばへと近寄る。一番酷いのは両腕だけど頭も顔も傷だらけで、きっと布団で見えないところも傷が酷いんだろう。

「君は、今度は誰を救けようとしていたの」

 当然、緑谷くんの言葉はない。
 きっと緑谷くんのことだ。また誰かのためにボロボロになったんだろう。焦凍を救けた時のように。ないと思っていた個性が発現してずっと憧れていたヒーローになれると言われて、そのために自分の身を犠牲にしてまで。

 緑谷くんのギプスで固定された腕に触れる。
 図書室で緑谷くんに個性が突然発現したと話をされてから、色々な本や論文で個性について調べた。
 でも、どの論文も4歳以降の個性の発現は確認されていない。あったとしても本当は違う個性だったと発覚したことが、発現と勘違いされたのではないかと考察されたものだけ。つまり、高校入学前に個性が発現するなんてことはあり得ないということだ。
 なぜ緑谷くんが私だけではなく実の母親にまで嘘を吐いているのかは分からない。それだけ隠しておきたいことなんだろう。




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