長野県で合宿中の雄英のヒーロー科1年が敵に襲撃されたというニュース速報が流れたのは23時を過ぎたときのことだった。
そのニュースを聞いてすぐに焦凍に電話をした。少しの間を置いて電話に出た焦凍は大きな怪我はしていないと、そのことを知って思わず力が抜けてしまった。飯田くんもお茶子ちゃんも梅雨ちゃんも無傷か軽傷で命に関わるものではないらしい。
ただ緑谷くんは。体育祭で焦凍と戦った時の傷よりも酷い傷を負いながら動いていたと。最後は気を失って近くの病院に運ばれたということだった。
焦凍との通話を切り、ニュースで伝えられた場所近辺の病院を調べる。手術が必要だった体育祭の時よりも酷い傷なら、救急対応もしている大きな病院だろう。
ここだろうといくつかの病院に見当をつける。
午前4時、まだ両親も寝ている時間に自室を出て1階へと降りる。
代替機がGPSの付いていないスマホでよかった。ドライブモードにして鞄の中へしまう。兄さんや両親の心配する声が頭をよぎり、頭を振る。心臓の動悸がうるさい。
行っても私に出来ることなんて何もないのは分かってる。
それでも。友達が傷ついているのに、これ以上何もできない人間になりたくなかった。
息を1つ吐いて家を出る。家族の言いつけに背いた行動を取るのは、これが初めてだった。
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