明日は明日の風がふく | ナノ
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 今日はお茶子ちゃんと梅雨ちゃんと期末試験に向けてテスト勉強をしようと話していた日だ。
 ヒーロー科の生徒も他科と同じ範囲のテストが出題されるらしく、数学のことで悩んでいたお茶子ちゃんに私が声をかけたからだ。梅雨ちゃんも筆記試験に不安はないということだけど、一緒に勉強会をしたいと言ってくれて、皆で勉強会をすることが決まった。
 本当は昼食を取ることの多いフリースペースで勉強をしようと思っていたが、テスト前だからか人が多く3人も座れそうな席はなくて、図書室もわずかに席が空いているだけだった。
 普通科と違い、ヒーロー科の生徒は筆記試験だけでなくヒーロー科目の演習試験もあるというから大変だろう。普段2人のために出来ていることなんてないからこの勉強会でくらい何か出来ればいい。昨日家でも復習をしていたけれど、ヒーロー科の授業が終わるまでテスト範囲をもう一度頭から見直した。


「赤音ちゃん!お待たせ!」
「2人とも授業お疲れ様」

 しばらく待っているとお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが図書室にやってきた。2人が席に座るのを確認して、教科書を開く。先日お茶子ちゃんが分からないと言っていたのは二重根号の計算だ。いくつか段階別に問題を解いてもらって、その中でどこから分からなくなっているのかを確認していこうと思っている。お茶子ちゃんの向かいに座る梅雨ちゃんは、英単語帳を開いて英単語の確認をしていた。
 誰かと向かいあって勉強をするなんて初めてのことで、感慨深いものを感じた。


「緑谷ちゃん。あなたも勉強しにきたの?」

 お茶子ちゃんと一緒に解いた問題を見直していると、私の背後に向かって梅雨ちゃんが声をかけた。
 振り返り見ると、そこに立っていたのは緑谷くんで、両手には数冊の本を抱えている。目が合ったと思ったら、その視線はすぐに梅雨ちゃんに向けられた。

「うん。ヒーロー基礎学の法律のことでちょっと気になったことがあったから、借りていこうと思って。テスト前だからやっぱり混んでるね」
「それ、全部借りてくつもりなの?」

 お茶子ちゃんの引きつったような言葉に緑谷くんが頷く。確かに緑谷くんが抱えている本はそこそこ厚く、持って帰るのも少し苦労しそうなものだ。
 図書室の座席はほとんど埋まっていて、緑谷くんが座れそうな席は梅雨ちゃんの隣で私の真向かいの席くらいしかない。わざわざ重い本を持って帰るよりはここで読んでいったほうが負担は少ないのではないかと思う。私とお茶子ちゃんが話をしながら勉強をしているから、それが気にならなければだけど。
 お茶子ちゃんと梅雨ちゃんを見る。2人とも同じように考えていたのか、空いている席を一瞥していた。

「その空いている席、もし良かったら使ってよ。話し声とかで気が散っちゃうならいいんだけど」
「えっ、でも勉強会してたんでしょ?邪魔することになるだろうし」
「大丈夫大丈夫。むしろこっちがごめんねって感じだから、気にしないで」
「ええ。その本を持って帰るのは大変だと思うわ」

 2人の言葉もあって、緑谷くんが向かいの席に申し訳なさそうに座る。
 気配を消すようにして本を読む緑谷くんに、お茶子ちゃんと顔を見合わせた。

「緑谷ちゃん。そこまで気にされたら私たちも気になっちゃうから、もっと普通にしてていいのよ?」
「ご、ごめん」

 そう言った梅雨ちゃんに、緑谷くんはますます申し訳なさそうに頭を下げた。




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