明日は明日の風がふく | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


 体育祭から4日、既に体育祭後の熱気は治まり、いつもの日常が戻ってきた。変わったことと言えば、クラスメイトからいたずらに声をかけられなくなった。速見が私を避けるようになったからだろうか。反対に心操とは朝の挨拶くらいはするようになっていた。
 今日はお茶子ちゃん、梅雨ちゃんと昼食を食べようと約束をしていた日だ。4限目も終わり、食堂の前でお茶子ちゃん達を待つ。

「赤音ちゃんごめんね!お待たせ!」
「ううん、大丈夫」

 受け取り口で日替わり定食を受け取り、席に着く。週明け、お茶子ちゃんたちは職業体験に行くらしい。梅雨ちゃんは水難救助をメインに活動しているヒーロー事務所で、お茶子ちゃんは敵との交戦がメインのヒーロー事務所へと行くようだ。

「梅雨ちゃんは個性を生かした職業体験なんだろうけど、お茶子ちゃんはなんていうか、意外なところに行くんだね」
「体育祭で爆豪くんに負けたときにね、見聞を広げるのも大事だと思ったんだ。強くなれば可能性も広がるし」

 そう言ったお茶子ちゃんの顔に陰りは見えず、内心安堵した。最後にお茶子ちゃんと会ったのは爆豪勝己との試合の後、扉越しに彼女の嗚咽を聞いてしまったときだ。あのあと、焦凍にもそれとなく聞いてはいたけれど、お茶子ちゃんは大丈夫か心配していたが、杞憂だったようだ。
 負けてしまったからと、そこで立ち止まらず自身に不足していたものを分析して、行動するというのはとても大事なことだ。私もお茶子ちゃんを見習わなくては。
 そして職場体験に行くからと話題は決めたヒーロー名の話に。2人とも小さい頃から考えていたヒーロー名があったみたいで、名は体を表すという言葉のまま、分かりやすい且つ親しみやすさのある名前だった。
 ヒーロー名といえば、焦凍は一体どんな名前にしたんだろうか。小さい頃はヒーローネームを2人でこっそり考えていたけど、今度聞いてみよう。

「フロッピーにウラビティ、どっちも素敵なヒーロー名だね。そういえば、緑谷くんと飯田くんはどんなヒーロー名にしたの?」
「緑谷ちゃんはデク、飯田ちゃんは天哉、ね。緑谷ちゃんもだけど、飯田ちゃんのほうが意外だったわ」
「飯田くん、大丈夫かな。お兄さんのこともあるし、最近元気ないよね。でも職場体験はインゲニウムの事務所の近くに行くらしくて、本当に大丈夫かな……」

 体育祭後の夜にインゲニウムのニュースを見て、飯田くんの携帯にメッセージを送ったけれど大丈夫と返信があったけれど、そう言わざるを得ない状況だったんだろう。まだ事件から数日しか経っていないのにも関わらず、わざわざ事件のあった街に行くだろうか。あまり良い予感はしない。明日のクラス委員の集まりで、飯田くんとは会うけれど、話を聞いてみても大丈夫だろうか。
 周りのざわめきを他所に、この場だけ重苦しい空気に包まれる。私が聞いてしまったからだと、何か話題を探す。

「そういえば、緑谷くんのデクって名前。あだ名だと思ったけどお茶子ちゃんが考えたの?」
「え、ううん。元々は爆豪くんが言ってたぽくて、頑張れ!って感じの響きがなんか良いからそう呼んでるの。こ、コペなんとか、てんかい?って言ってた」
「今まで好きじゃなかったけど、ある人に意味を変えられた、って言ってたわね。そういえば」

 梅雨ちゃんの言葉にお茶子ちゃんが顔を赤くして慌てだす。あの緑谷くんが好きじゃなかったと言うほどだから、お茶子ちゃんにそう言ってもらえたことがどれほど嬉しかったかは、想像に難くない。
 自分の思いをちゃんと言葉にして言うことが出来ていて、お茶子ちゃんのそんなところも見習わないといけないと思う。
 そんなお茶子ちゃんはまだ顔を赤くしたまま、定食のおかずをつついていた。




back


.