明日は明日の風がふく | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


 応援席へ戻ると、私に気付いた心操が大きく息を吐いた。押しのけるように通路に出てしまったため、彼には迷惑をかけてしまった。
 もう次の試合が始まるというアナウンスにスタジアムの中央に目を向ける。次は芦戸と常闇の試合だ。芦戸という女子生徒は先ほどの試合を見る限り、他のヒーロー科の生徒と比較しても身体能力の高さが目立つ。それでも常闇の個性の方が死角がないため、分が悪いだろう。
 案の定、反撃する隙を与えなかった常闇の勝利となった。時間を置かず、爆豪勝己と切島の試合が始まろうとしている。試合場の修繕にかかった時間調整のためだろうか。

「あいつ、爆豪の攻撃が効かないのかよ……」

 爆豪勝己の爆破に怯まず猛攻する切島に、心操が呟いた。

「無効化する個性じゃない限り、効果がないとは考えにくい。彼の場合は衝撃に対しての耐久値が高いだけだと思う」
「じゃあ耐久戦でもするつもりか?それにしちゃ随分手数が多い気がするけど」

 心操の言う通り切島の個性を考えれば防御に優れている分、耐久戦の方が勝率は高いだろう。それをしないということは、爆豪勝己相手では得策ではないということか。

『ああー!!効いた!!?』

 切島の体がふらついたのを狙い、爆豪勝己が体勢を立て直す隙も与えず攻撃をする。死ね、とヒーローにあるまじき言葉を吐き、爆豪勝己が勝利した。最後の連続爆撃はこれまの攻撃よりも威力が上がっているように見えた。とすれば、爆豪勝己の個性は時間をかけるほどに威力が上がっていくものなんだろう。

 次はついに準決勝、1戦目は焦凍と飯田くんの試合だ。緑谷くんのときと同じように初手は氷結を出すだろう焦凍に対して、飯田くんはどう攻略をしていくんだろうか。
 モニターに映し出された焦凍は緑谷くんとの試合以前と比べて、凪いだ顔をしていた。
 スタートという合図と共に焦凍の氷結が飯田くんに向かう。それを避けるように飯田くんが焦凍の頭上を高く跳んだ。空中で飯田くんのエンジンが煙を吹き出し、目にも留まらぬ速さで繰り出された蹴りを避ける焦凍。しかし避けられることを飯田くんも予測していたのか、その反動を利用して再び繰り出された蹴りを避けることが出来ず、頭を蹴られた焦凍が地面に倒れた。

「騎馬戦のときのか」

 心操が呟き、あれが黒煙で見えなかった飯田くんの個性による超加速だと知る。目で追うことは出来てもあの速さに反応するのは難しいだろう。
 焦凍が起き上がると同時に地面を凍らせるが、それを跳んで避けた飯田くんが焦凍の背を掴む。場外へ投げ飛ばすつもりなんだろうか。しかし、飯田くんの動きが突然止まり、焦凍の氷結が飯田くんお全身を覆い行動不能となった。焦凍は炎熱の個性を使うことなく決勝へ進んだ。

 準決勝2戦目は爆豪勝己と常闇、どちらも強個性の2人の試合だ。開戦早々、爆豪勝己の連撃によって常闇は防戦に徹している。疲弊している常闇に、物理攻撃は効かないものだと思っていたが、そうではないということか。

「爆豪の個性じゃ、相性悪いだろうな」
「どういうこと?」

 心操の言葉に彼に目を向ける。

「常闇の個性、光が弱点らしい。だから攻撃できないんだと」
「そうか、だから常闇が攻撃できないのか」
「……近くを歩いたときに偶然聞こえたんだ。別に盗み聞きしようとしたわけじゃない」

 ばつが悪そうに心操が顔を逸らす。盗み聞きをしたと私が疑っていると思ったのだろうか。随分卑屈な考えだと思ったが、彼の個性のことを考えると色々苦労してきたのだろう。
 心操の言葉に相槌を打ち、視線を試合場へ戻す。横から心操の視線を感じたが、しばらくすると心操も前へ視線を戻した。
 常闇の背後に回った爆豪勝己が強い光を放った直後、爆破音と共に煙が上がる。煙が晴れると、常闇の口を押さえた爆豪勝己の姿が見えた。常闇が降参し、爆豪勝己の勝利が決まる。
 決勝戦、焦凍の対戦相手は爆豪勝己となった。




back


.