明日は明日の風がふく | ナノ
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 青山と芦戸の対戦中、青山にアッパーカットが入り、芦戸のKO勝ちとなった。飯田くんに対して、芦戸達の対戦時間は僅か4分。お茶子ちゃんと爆豪勝己の試合まで残り2試合となった。

「ヒーロー科の奴が気になるの?」
「ヒーロー科のって、誰のこと」

 常闇と八百万の試合が始まり、八百万によって創り出された物を常闇が次々と弾き飛ばしていくのを見ている中、心操に声をかけられる。2人の対戦から目を離さず、心操の言葉に答える。八百万の足は徐々に後退し、形勢不利な状態が続けばこのまま場外になるだろう。
 腕時計を見るとまだ3分しか経過していない。決着が着くまであと5分ほどかかるだろうか。

「麗日、だっけ?塚内さんの知り合いの。なんか、さっきからやたらと時計を見てるし」

 心操を横目で見る。大げさに見ていたつもりはなかったが、気づかれていたようだ。とはいえ、隠す必要もないから心操の言葉に頷く。

「気になるよ。友達、だから」
「……ふーん」

 自分から友達というのはまだ慣れない。気恥ずかしさから自分の膝の上に置いている手を見つめていると、鼻を鳴らすように心操が合図地を打つのが聞こえた。
 勝負は八百万が場外へと落とされ、常闇の勝利が決まった。どちらも戦闘に優位な個性ではあるがまるで生物のような常闇の個性は2対1で戦うようなものだから、物を創り出すタイムラグのある八百万には分が悪かっただろう。
 次の試合は切島と繰り上げ出場の鉄哲という、どちらも似たような個性のため、決着が着くのは時間がかかりそうだ。

「相手が爆豪だから気になる気持ちも分からなくはないけど、さすがに女子相手にヘタなことはしないだろ」
「爆豪ならやるよ。目的のためなら外聞も手段も選ばない人間だろうし」

 即答した私を心操が訝しげに見る。
 爆豪勝己はこの場の誰よりも勝利することに固執している。執念とも言えるそれは、ヒーローを目指すものとして褒められたものではないが。しかし完璧であろうとするからこそ、爆豪勝己は相手が誰であれ加減をするような人間ではないだろう。

「酷い言い様だな……」
「周りの考えで自分がぶれないから、だから強いんだよ」

 切島と鉄哲の戦いは互いに拮抗し、未だ決着が着きそうにない。どちらも防御に優れた個性であるからか、相手の攻撃を避けることはしない。それとも彼らの性格故だろうか。

「……あのさ、俺と緑谷の、見ててどう思った?」

 切島と鉄哲の決着のつかない戦いを見ていると、突然心操が尋ねてきた。
 この席に移動してきた一番の理由はこれだろうか。心操に目を向ける。

「正直に聞かせてほしい」
「緑谷くんは君の個性のトリガーを知っていただろうけど、口を開かせることが出来たのは良かったと思う。あのままいけば君の勝ちだったろうけど」

 緑谷くんのアレが予想外すぎた。騎馬戦では押しても引いても洗脳が解けなかったから、あれくらいの物理的刺激が必要なんだろう。

「でも洗脳が解かれたあとにまた個性を使おうとしていたのは、無駄な行為だと思った。君の敗因は洗脳が解かれたことじゃなくて、近接戦の経験の差だろう」
「……そうだよな」

 俯きながら頷く心操。おそらく彼が一番よくわかっている。ヒーロー科は授業内でも戦闘訓練をしているから経験の差は仕方ないことではあるが、差を縮めることは普通科でもできることだ。

「でも、君の個性は本当に強力だなって改めて思った。だから洗脳が解かれても、持久戦に持ち越して集中力の欠けてくる相手の隙を突いて個性を使えるように基礎体力を鍛えるべきだと思う。」

 心操が顔を上げる。速見が言っていたようにトレーニングをしているのなら、既に自分の課題にも気付いているんだろう。

「自分で敗因にも課題にも気付いているなら、あとは“将来”への気持ち次第だから。今の心操くんならきっと成果を出せると思うから、頑張って」
「っ、あぁ。……ありがとう」
「それよりも今はヒーロー科の戦い方を学んだほうがいい。君の個性は相手の戦闘スタイルによっても左右されるだろうし、後で録画をしたものを見るとしても、今見るのとで受ける印象も違うだろうから」

 視線を心操から試合場へと戻す。切島も鉄哲もお互いに満身創痍といった感じでそろそろ決着が着くだろうかと思った次の瞬間、互いの右フックによって同時に倒れた。結果は引き分けとなり、回復後に腕相撲で勝敗を決めることになった。
 ついにお茶子ちゃんと爆豪勝己の試合が始まる。お茶子ちゃんが爆豪勝己に触れることさえできれば勝利は決まったものだけれど、そう簡単に触れられるとは思えない。でも、お茶子ちゃんも何らかの対策は考えてきているんだろう。
 お茶子ちゃんと爆豪勝己が試合場へと上がる。緊張しているのではと思っていたけれど、お茶子ちゃんはそれでも真っ直ぐに爆豪勝己を見据えて立っているのを見て、両手を握りしめた。




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