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「#幼馴染」のBL小説を読む
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 焦凍と瀬呂の対戦が始まる。瀬呂の肘からテープのようなものを出す個性は拘束力に長けているが、それでも焦凍の方が勝率は高いだろう。
 スタートという合図と共に瀬呂の先制攻撃が決まり、テープによって拘束された焦凍が場外へ放られる。と思ったその時、目の前の氷壁に覆われた。焦凍の個性によるものだ。氷壁によって身動きの取れなくなった瀬呂は行動不能となり、焦凍の勝利となった。

「……ンだよ、これ」

 隣の席に座る心操が唖然とした表情で呟く。焦凍があのまま反撃をせずに場外に出るはずがない、と考えていたけれど、予想以上だった。
 ドンマイと観客達から瀬呂へ掛け声をかける中、モニターに炎熱の個性を使って氷を溶かす焦凍の後ろ姿が映る。焦凍が炎熱の個性を使うところを見るのは初めてだった。
 いや、一度だけ見たことがある。焦凍が個性を使うのを初めて見たときだ。使用人の1人がすぐさま実父に連絡を取りに走るのを横目に、私と焦凍は2人で立ちすくんだまま焦凍の両手を見ていた。
 その後、いつもより早く帰宅した父が真っ直ぐに焦凍のもとへやってきた。滅多に褒めることのない父の興奮したような言葉が焦凍だけに向けられていると知った時、私はひそかに焦りを感じた。
 そして姉としての矜持からきた焦りは次第に嫉妬となり、そして焦凍を傷つけた。
 氷を溶かし終え、試合場を後にしようとする焦凍の姿がモニターに映し出される。まるでこの戦いなどなかったかのように表情なく歩く焦凍の姿がなぜか、公園で傷ついた顔をしていたあのときの焦凍と重なった。

『ステージを渇かして次の対決!!』

 次の試合を知らせるアナウンスが鳴り響く。次は上鳴と該当者の棄権によって繰り上がりで出場することになった塩埼の対戦だ。

「塚内さんならどっちが勝つと思う?」
「2人の個性の相性を考えたら塩埼さんだと思う。茨で電気を誘導して地面に逃がしてしまえば無効化できるだろうし……」

 心操に尋ねられ、答えている間に上鳴が塩崎に拘束された。上鳴の放電は塩埼の茨の壁によって防がれ、勝負開始から僅か1分にも満たない戦いは文字通り瞬殺に終わった。

「あっけなかったな」

 鼻で嗤うように呟いた心操に、言葉にしなかったが心の中で同意した。

 次は飯田くんが出場する。対戦相手はサポート科の発目だ。サポートアイテムの使用を許可されている発目だが、何故か飯田くんにサポートアイテムが装備されている。
 この場で飯田くんがサポートアイテムを使うはずがないと思っていたけれど、どうやら装備しているアイテムは発目から渡されたもののようだ。無下に扱えない、という実直な飯田くんらしい言葉に頬が緩んだ。
 しかし飯田くんに対し、発目は彼に装備されたアイテムや自身が装備していたアイテムの説明を行うばかりで、テレビの通販番組のような戦いは10分も続いた。発目は最後に自ら場外となり、飯田君の勝利で終わった。騙したな、と飯田くんが声を上げるのが聞こえるが、最後まで付き合ってしまうあたり、彼は真面目すぎる。
 戦いの結果に不満を持つ人もいたようだけれど、体育祭はヒーロー科が主役という考えが強い中で、発目のアピールの仕方はとても斬新なものだ。ヒーロー科を翻弄し続け、自身の発明アイテムの発表を終えた発目に、サポート科からは歓声が沸き起こっていた。




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