明日は明日の風がふく | ナノ
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 「ようやく終了ね。それじゃあ結果をご覧なさい!」

 ゴールした順に生徒の名前が挙げられていく。
 1位に緑谷くん、2位が焦凍、3位に爆豪勝己と知った名前が続く。
 飯田くんや梅雨ちゃんやお茶子ちゃんの名前も挙がっていて、その中には心操の名前もあった。そして40位に塚内赤音と名前が挙がり、失格も覚悟していたため内心安堵する。
 頭を横に振っていたお茶子ちゃんと梅雨ちゃんと目が合い、互いに手を振り合う。

「予選通過は上位43名!!」

 全43名の予選通過者の名前が挙げられ、ステージ上にホログラムが現れる。
 第一種目と同様にドラムロールが流れ、映し出された種目は【騎馬戦】だった。それぞれの順位に応じたポイントが割り当てられ、2人から4人で騎馬をつくるというものだ。

「そして…1位に与えられるポイントは、1000万!!!!」

 グラウンドに立っていた全生徒が緑谷くんを見る。中心に立っていた緑谷くんが拳を固く握り締めたのが見えた。
 香山先生のルール説明が続く。制限時間は15分、騎手が騎馬の総ポイント数の書かれたハチマキをして争うようだ。そしてハチマキを取られても騎馬が崩れてもアウトにはならず、15分間常に騎馬がグラウンドにいることになる。

「それじゃあこれより15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」

 ざわつきながらも、それぞれがチームを組みたい人達のもとへと向かっていった。

 交渉開始早々、焦凍は既に騎馬戦のメンバーを決めていた。飯田くんに大砲を創り出していた八百万、電気を操る上鳴という生徒によって構成された騎馬は、攻撃力・防御力・機動力のどれをとってもバランスのいい騎馬だろう。
 人格はアレだが実力はあるのだろう、人だかりの中心にいた爆豪勝己も焦凍が決めたのを見て、騎馬戦のメンバーを決めていく。一方で緑谷くんは、個性とポイントの高さからチーム戦では分が悪いのだろう。未だメンバーが見つからないようだった。

「塚内さん。騎馬戦さ、俺と組まない?知り合いがいたほうが心強いんだけど」

 後ろから声をかけられて振り向くと、そこには心操が立っていた。眉を顰める心操の後ろには、青山という男子生徒が虚ろな目をして立っている。
 手を差し出してくる心操に以前話したときとは違う、得体の知れないものを感じ彼の顔を見続ける。

「……塚内さんさぁ「赤音ちゃん!!」」

 心操の言葉を遮るようにお茶子ちゃんが私の名前を呼び、私と心操の顔を見比べると慌てたように手を振る。
 お茶子ちゃんがいる方へと目を向けた心操は面白くなさそうに鼻を鳴らし、背を向けて去っていった。

「えっと、話し中だった?ごめんね!」
「いや、なんでもないよ。どうしたの?」
「あのさ、もし良かったら一緒に騎馬戦のチーム組まない?仲良い人とやったほうが楽しいよ!」

 仲の良い人、という言葉に思わず頬が緩みそうになったが、この体育祭の目的を思い出す。ヒーロー科の将来を決めることにもなるこの体育祭で、お茶子ちゃんが私と組むメリットは気心が知れているということしかない。家族のことを考えれば、自分にとって少しでもメリットが多い人を選ぶべきなんだろう。
 それでも、自分のためにお茶子ちゃんの将来を潰してしまうようなことはしたくなかった。

「……嬉しいけど私じゃお茶子ちゃんの個性を生かした戦いはできないから、足手まといになるだけだ。だから、ごめん」
「えっ、あ、うん!何も考えなしで、こっちこそごめんね!……じゃあ、お互いがんばろ」

 力なく笑って戻っていくお茶子ちゃんの後ろ姿に罪悪感を感じるが、交渉タイムはもう僅かしかない。
 既に大半の人達はチームを組み終えているのを見て、頭を振って気持ちを入れ替える。
 一番強敵となるだろう焦凍がチームを組んだ時点で、組んで欲しい人の候補はいくつか考えていた。その中でもまだ4人チームが決まっていない、25位の男子生徒のチームに声をかける。

「話し合い中にすいません、40位の普通科の塚内です。突然で申し訳ないのですが、あなた達のチームに入れてもらえないでしょうか」

 突然声をかけた私に、凡戸という名前の男子生徒を含めた3人が顔を見合わせる。

「吹出の前を走ってた子?でもなんだって俺達のチームに?」
「あなた達のチームがこのチーム戦では有利だと考えたから。それにB組の人達はあえて下位になったのだろうから、私も皆の動きを見ていたからサポートできればと思う」
「へえー、よく見てたんだねえ」

 20位以内に入っている生徒のほとんどはA組だ。能力が均等に割り振られているだろうクラス分けをされている中で、B組ばかりが下位になるとは考えられない。私と同じように状況把握のために下位に固まったんだろうと考えていたが、その通りのようだ。

「個性はないけど、トンファーで防御くらいは出来る。機動力の面でも足手まといにはならないと約束する」
「ギュンッ!って追い上げすごかったもんなー!ボク的にはいいと思うぜ!」
「ん」
「あぁ、普通科の特待生枠の人か。人がいれば、個人の負担も減るしねえ……うん、よろしくねえ」
「ありがとう」

 吹出と小大の2人の言葉に頷いた凡戸に手を差し出され、握手をする。
 私達のチームは小大が騎手となり、先頭は凡戸、右翼が私で左翼が吹出に決まった。チームのポイントは90、60、15、10ポイントを合わせた計175ポイント。自チームのハチマキを捨て、他チームのハチマキを狙う作戦でいくことになった。一部を除いたB組は同クラスでハチマキは取り合うものの妨害はA組にのみ行うと決めているようだ。あくまでB組が目指すのはB組の勝利ということなんだろう。
 チーム決めの時間が終了し、全員が騎馬を組んだところでカウントダウンが始まる。トンファーをすぐに使えるように腰に提げた。
 お茶子ちゃんを見ると、緑谷くんとサポート科の発目、7位の常闇で構成された騎馬にいた。1位の緑谷くんと同じチームであればプロヒーローからの注目度も高いだろうし、彼ならお茶子ちゃんの個性を最大限に生かした戦いが出来るだろうと安堵する。
 お茶子ちゃんの気持ちに応えられなかった分、せめて恥じない戦いをしようと視線を前に向ける。

 スタート、という開始の合図とともに走り出した。




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