明日は明日の風がふく | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


 緑谷くん達と共に昼休みを過ごした日の午後、彼らA組は授業中に外部からの敵に襲撃された。敵が襲撃したと発覚した直後、全校生徒は直ちに帰宅することになり、翌日の臨時休校については雄英高校からの一斉メールによって知らされた。
 この事件は全国に放送され、敵の主犯格と思われる男のモンタージュ写真も公開された。その男、死柄木弔のモンタージュ写真は、雄英のセキュリティが突破されたときに私が遭遇した不審者にとてもよく似ていた。雄英に侵入した男とA組を襲撃した死柄木という男は同一人物なのかもしれない。そのことは石山先生から他言しないようにと直接伝えられた。

 敵に襲撃されるも全員欠けることなく無事生き残った1年A組は、体育祭が近づいていることもあって、全校生徒の注目の的となった。
 体力テストのため私達C組はグラウンドに集合していたが、クラスメイト達もA組の話題で持ちきりだった。

「A組すごいなー。模擬戦じゃなくて実戦だったんだろ?」
「でもどこもA組A組って、うざくね?良い個性持ってただけだろ」
「強い個性持ってる奴らが羨ましいよ」
「な。こんな個性じゃなかったら、俺だって合格してただろうに」
「不公平だよなー世の中。個性次第かよ」

 速見と一緒にいる男子生徒達が不満げにA組のことを話しているのが聞こえる。このクラスはヒーロー科の滑り止めで普通科に入った人が多いからなのか、クラスメイトの大半がA組への賞賛以上に個性の不平不満をこぼしていた。

「まぁでも、無個性よりはマシだけどな!」
「ギャハハハ!それな!アイツ比べたら全然マシだわな!」

 私に目を向けた速見が嘲笑するのに合わせて周りも笑いだす。
 誰かが何かを言うたびに嘲笑が起こり淀んだ空気が伝播するのを感じながら、準備体操を続ける。
 ストレスを発散しようとした吐き出した言葉が更にストレスになって悪循環になっているということが分からないのだろうか。

「うちには他のクラスに比べたら特待生もいるし、勉強するしかない無個性よりマシだよね」
「だってさ。なぁどう思うよナードちゃん?」

 嘲笑する速見達のグループと同じような顔をして周りも笑っている。
 全てを個性に結びつける彼らに、ため息が出そうになるのを堪える。自分の行いを省みることもなく、個性のことばかりを言い訳にする彼らに怒りを覚えた。

「良い個性じゃないとか強い個性じゃないとか、それでヒーロー科に行けなかったのはただの言い訳でしょ」
「は?無個性のお前に何がわかんだ、っ!?」
「それ、どういうこと」

 吼える速見を押しのけて、突然心操が私の前に立った。速見達の話には入っていなかったが、私のことを見ていたのは知っている。笑みを浮かべているが、心操の目は決して笑っていなかった。

「言葉の通り。出来ないことは個性のせいにして逃げて、下を見て自分は大丈夫だと安心して努力をしようともしない。言い訳以外のなんだというの?」

 クラスメイト達が話すのをやめ、辺りは静まり返った。
 緑谷くんは無個性でも、弱音も吐かずに死に者狂いで努力をしてヒーロー科に合格した。それに比べて、行動しようともせず良い個性だからと決めつけて不満ばかりを言う彼らが許せなかった。

「じゃあアンタは無個性を言い訳にしなかったっていうの」
「絶対にないとは言わない。でも、努力はしてきた」

 石山先生がグラウンドにやってくるのが見えて、心操から視線を外して背中を向ける。
 心操や速見、他のクラスメイト達の視線を後ろから感じたが、誰も言葉を発することはなかった。




back


.