明日は明日の風がふく(旧) | ナノ
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応援席へと戻ると、私に気付いた心操が安堵したように息を吐いた。
一体何だというのかと思ったが、もう次の試合が始まるというアナウンスにスタジアムの中央に視線を向ける。
次は芦戸と常闇の試合だった。
芦戸という女子生徒は先ほどの試合を見る限り、運動神経が高いのだと思う。だが、常闇の個性には分が悪いだろう。

芦戸の個性の効かない常闇の個性によって芦戸が場外へと落とされる。常闇の勝利となった。
時間を置かず爆豪勝己と切島の試合が開始される。試合場の修繕にかかった時間の調整のためだろう。


「あいつ、爆豪の攻撃が効かないのかよ……」

隣の席の心操が呟く。
爆破に怯まず猛攻に出た切島が爆豪勝己を押していた。

「無効化する個性じゃない限り、ダメージは蓄積されていくから効かないなんてことは無い。ただ彼の場合は耐久値が高いだけだと思う」
「じゃあ、耐久戦でもするつもりか?それにしちゃ随分手数が多い気がするけど」

確かに切島の個性を考えれば防御に優れている分、持久戦の方が勝率は上がるだろう。それをしないということは、爆豪勝己と持久戦をするのは勝ち目が薄いから、ということか。

『ああー!!効いた!!?』

切島の体がふらついた隙に、爆豪勝己が体勢を立て直す隙も与えず連続で爆撃する。
死ね、というヒーローに似つかわしくない言葉を吐き、爆豪の勝利となった。
最後の連続爆撃はこれまでの攻撃よりも威力が上がっていたように見えた。だとすれば、爆豪勝己の個性は時間をかけるほどに威力が上がっていくものなのだろう。

「爆豪勝己の個性が持久戦向けだから、切島は持久戦を避けようとしたんだろうね」
「……なるほどな」

一度口を開いた心操が何か言葉を飲み込むように口を閉じ、小さく呟いた。
 


準決勝、焦凍と飯田くんの試合が始まる。
おそらく開始と同時に焦凍は氷結を出すだろう。それを飯田くんはどのように攻略をしていくのか。
モニターに映し出された焦凍の表情は緑谷くんとの試合以前と比べ、凪いだ表情をしていた。

スタートという合図に焦凍の氷結が地面を走る。それを避けるように飯田くんが跳ぶ。
物体に沿うように凍らせる焦凍の氷結は、何もない空中では出すことは出来ない。そのため焦凍の頭上を高く跳ぶ飯田くんの動きを止めることは出来なかったようだ。

目にも留まらぬ速さで出された飯田くんの蹴りを、頭を下げて避ける焦凍。しかし、その反動を利用して再び繰り出された飯田くんの蹴りを避けることが出来ず、頭を蹴られた焦凍が地面に倒れた。

「騎馬戦のときのか」

心操が呟き、あれが飯田くんの騎馬戦で見せた超加速だと知る。目で追うことは出来てもあの速さに対応するのは難しいだろう。
起き上がると同時に地面を凍らせる焦凍を跳んで避けた飯田くんが焦凍の背を取り、掴む。場外へ投げ飛ばすつもりなのだろうか。
しかし、突然飯田くんの動きが止まり、焦凍の氷結が飯田くんの全身を覆い行動不能となった。あの不自然な動きは飯田くんの個性がエンストでも起こしたのだろうか。
結局、焦凍は炎熱の個性を使うことなく決勝へと進んだ。



準決勝2戦目、どちらも攻撃力の高い個性を持つ2人の試合だ。
開戦早々、爆豪勝己の連撃によって常闇は防戦に徹することになっていた。常闇の個性は物理攻撃が効かないものと思っていたが、そうではないということだろうか。

「あの個性とじゃ、相性悪いだろうな」

心操の言葉に顔を彼に向ける。

「どういうこと?」
「常闇の個性、光が弱点らしい。だから攻撃できないんだ」
「そういうことか。でも何故君がそんなことを知ってるの」
「……近くを歩いたときに偶然聞こえたんだよ。別に、盗み聞きしようとしたわけじゃない」

決まりが悪そうに心操が視線を逸らす。
盗み聞きをしたと私が疑っていると思ったのだろうか。
随分卑屈的な考え方だと思ったが、洗脳という彼の個性のことを考えると色々と苦労をしてきたのだろう。

「そう。どうりで常闇が攻撃できないわけだ」
「……そうだな」

盗み聞きをしたわけじゃないという言葉に相槌を打ち、視線をスタジアムの中央に戻す。
しばらくの間横から心操の視線を感じたが、小さく呟いたあと心操も視線を前へと戻した。

常闇の背後を取った爆豪勝己が強い光を放った直後、爆破音が鳴り響く。
煙が晴れると、常闇の口を抑え跨る爆豪勝己の姿が見えた。
常闇が降参し、爆豪勝己の勝利となる。決勝戦、焦凍の相手は爆豪勝己となった。




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