明日は明日の風がふく(旧) | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


食堂へ向かうと、以前訪れたときとは比べ物にならないほどに人で溢れかえっていた。
既に着いているだろう梅雨ちゃんの姿を探す。

「ごめんね待たせちゃって」
「別にいいのよ。気にしないで」

受付の近くで立っていた梅雨ちゃんに手を引かれ、テーブルへ向かう。
そこにはお茶子ちゃんと飯田くんの他に、彼らと同じクラスだろう生徒も座っていた。

「赤音ちゃんお疲れさま!」
「君が食堂を利用するなんて珍しいな」
「オリエンテーションで体育祭当日は生徒全員食堂を利用するように言われたからね」

全生徒が1つの場所に集まっていたほうが警備しやすいのだろう。よく見てみると食堂の端々にカメラロボや警備担当のヒーローが立っていた。
お茶子ちゃんに隣の席を座るよう促され、梅雨ちゃんとお茶子ちゃんの間の席に座った。

「飯田くんもお茶子ちゃんも最終種目進出おめでとう。次も頑張ってね」
「ありがとう!」
「あぁ」

力強く頷く2人。そして緑谷くんにも、と思ったがその緑谷くんはまだ食堂に来ていないようだった。


「麗日さん、蛙吹さん……あら、そちらの方は?」
「あ、もしかしていつも話に出てくる子?」

昼食を食べようとしていたところ、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんが声をかけられる。そこに立っていたのは騎馬戦で焦凍のチームの騎馬であったポニーテールの女子生徒とショートカットの女子生徒だった。

「うん。塚内赤音ちゃん」
「そうでしたの。はじめまして私A組の八百万百と申します。よろしくお願いいたしますわ」
「C組の塚内赤音です。よろしくお願いします」
「ウチは耳郎響香、ヨロシク。……塚内ってどこかで聞いたことあると思ったんだけど、この前爆豪が緑谷と話してるときに聞いた名前だわ」
「爆豪くんが?」

お茶子ちゃんの言葉に頷く耳郎。

「塚内とどこで知り合ったんだとか言ってたんだよね。アイツが人の名前覚えてるのって珍しいじゃん?だから印象に残ってたみたい」
「確かに彼は人を個性や外見で判断している節があるからな。爆豪くんとも校外で知り合ったのかい?」
「うん、塾が同じだったんだ。話すことはあまり無かったけどね」

それに爆豪勝己が私を呼ぶときはたいてい『ナード』や『無個性』という蔑称ばかりだったため、あまり気にしていなかった。
そもそも『塚内』と呼ばれたのも先ほどの騎馬戦のときが初めてではないだろうか。

「それより百ちゃんは私達に何か話があってきたのかしら?」
「ええ。午後は女子全員でチアガールの格好をして応援合戦をやるらしいんですの」
「女子だけってのが妙に引っかかるんだよね。それに、峰田と上鳴が言ってたってのも……」
「信憑性は低いわね」
「ですが、相澤先生からの言伝なので……」
「うーん、赤音ちゃん達のクラスも応援合戦やるの?」

お茶子ちゃんに尋ねられ、体育祭の種目決めなどを行ったLHRを思い出す。
私のクラスでは特に応援合戦をやることも体操着以外の服装の着用も認められていなかったはずだ。

「普通科ではそんな話は聞いていないよ。ヒーロー科だけの話なんじゃないのかな?」
「大衆の面前でチアガールのコスチューム……もしや、これもヒーローとしての素養を身につける訓練の一環なのではないだろうか!」
「あぁ、なるほど!!そういうことか!!」

飯田くんの言葉にお茶子ちゃんが手を叩いて頷いた。
梅雨ちゃん達も互いに顔を見合わせて頷く。
しかし、体育祭の始まる前にプログラムの説明はあると思うのだが。


お茶子ちゃん達A組の女子生徒がチアガールのコスチュームに着替えるために、更衣室へと向かっていった。
その時に、透明になれる個性を持つ葉隠とピンク色の肌を持つ芦戸という女子生徒に自己紹介をした。
私のことはお茶子ちゃん達の友達である普通科の生徒という認識がA組内でされているらしく、第三者からそう思われていることが少しこそばゆかった。

お茶子ちゃん達と入れ違いになるように緑谷君が食堂へやってきた。

「ごめん、遅くなっちゃった。あれ?麗日さん達は?」
「麗日君たちなら応援合戦の準備に向かったぞ」
「応援合戦?そんなのあったかな……」

首を傾ける緑谷くんに同意する。
突然応援合戦を行うことになるなんて、そんなことあるのだろうか。
でも、飯田くんの言っていたようにこれもヒーロー科の訓練の一環なのかもしれない。

「そういえば緑谷くんも最終種目進出おめでとう。やっぱり君は凄いな」
「あ、ありがとう!でも麗日さん達のおかげでもあるから」
「そっか。次も頑張ってね」

私の分も頑張って欲しいという気持ちを込めて、緑谷くんに伝える。
その気持ちが伝わったのか、眼を逸らすことなく緑谷くんは小さく頷いた。





back



.