明日は明日の風がふく(旧) | ナノ
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結果、私達のチームは0ポイントで惨敗した。
上位に進出したのは焦凍のチームと爆豪勝己のチーム、心操のチーム、そして緑谷くんのチームだった。
最後の最後で焦凍のチームからハチマキを取ることが出来たのだろう。
自分は最終種目に進むことは出来なかったが、それでも緑谷くん達が次に進むことが出来たことに安堵した。


最終種目進出メンバーが発表された後、凡戸達や鉄哲チームの洗脳が解かれた。
全員何が起きたのか分からないという表情を浮かべながらも、モニターを見て自分達が騎馬戦で敗退したということを知った。

「気付いたら騎馬戦が終わってたな」
『それな。何がなんだかって感じだ。くっそー、ここで終わりか……』
「ん」

凡戸と吹出が敗退したということに悔しがる中、騎馬から降りた小大に手を差し出され握手をする。

「チームを組んでくれてありがとう。大した活躍もできず申し訳ない」
「んん」

首を左右に振る小大の後ろに凡戸と吹出が並んだ。

『あんたがいなきゃ後ろの放電に対処できなかったからな、助かったぜ!』
「あぁ。それにあの心操って奴の個性使われたときにアンタの言葉聞いときゃあんなことにはならなかったんだけどな……」
「彼が個性を使うのは初めてで、私も反応が遅れてしまってすまない。また機会があればその時はよろしく」

3人に頭を下げ、C組の控え室へと戻るためフィールドを後にする。

「赤音ちゃん」

梅雨ちゃんに声をかけられ後ろを振り向く。

「お互い騎馬戦残念だったわね。悔しいわ」
「そうだね。まさか梅雨ちゃんがあんなところにいるとは思わなかったよ」
「負けてしまっては意味がないのだけどね。そうだ赤音ちゃん、もし良かったら一緒にお昼食べましょうよ」
「うん、一緒に食べたいな。じゃあ食堂で」
「ええ。待ってるわ」

A組とC組の控え室は少し距離が空いているため、あとで食堂で合流することにして梅雨ちゃんに手を振った。

C組控え室の扉を開けると中には心操がいたが、一瞬目が合っただけで互いに無言で控え室を出る準備をする。
腰に下げていたトンファーを分解した短い棒のパーツをそれぞれホルダーにしまい、クラスメイトの忘れ物は無いか控え室を見回したその時、心操に名前を呼ばれ彼を見た。

「入学式のあとに個性の事は紹介したけど、どうやって洗脳するかとかは誰にも言ってない。なのに、何で分かったの」
「……確証は無かったけど、君が個性を使ったときは眉間に皺が寄っていたよ」
「!!」

咄嗟に左手で眉間を押さえる心操。彼自身も気付いていない癖だったようだ。
今まで個性を使ったところを見ていなかったが、チーム決めのときの心操の不自然な表情が引っかかっていた。おそらくあの時点で個性を使うつもりでいたんだろう。
そして騎馬戦時のあからさまな挑発と不自然な表情をした心操によって凡戸達が洗脳されたことで、あの表情が個性を使う徴候なのだろうと確信した。

「仮説だけど、個性を使おうとしていただろうチーム決めのときの君と目を合わせていても洗脳されることは無かった。つまり君の個性は相手からなんらかのアクションが無いと使えないんだろう」
「っ、ほとんど当たってる。洗脳したい奴に俺の問いかけに答えさせればスイッチが入る。……でも、そこまで分かっててなんでチームの奴に俺の個性のことを言わなかった」
「初対面の、しかも確証の無い言葉を信じろという方が無理じゃないの」

無個性というだけで信頼を得るのは不利になるため、不信感を与えてしまうような不確実な発言は避けたかったが、心操の個性がどんなものであるかは伝えてもマイナスになることはなかっただろう。

しかし、自チームが不利になるだろうということも分かっていたが、私は彼らに心操の個性のことを言わなかった。
決して負けてもいいと思っていたわけではないが、敵向きの個性と言われてもヒーローを目指そうと努力していた心操に、緑谷くんや私自身を重ねてしまっていた。その甘さが今回の敗因だった。

「……鍵を閉めなくちゃいけないから、出てもらってもいい?」
「ごめん」

心操が控え室を出ていくのを見た後、壁にかけられた鍵を取り扉を閉める。

「それじゃあ最終種目出場おめでとう。次も頑張って」
「……あぁ」

心操に軽く声をかけ、食堂へ向かう。
もしかしたら梅雨ちゃんを待たせてしまっているかもしれないと、歩くスピードを早めた。




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