明日は明日の風がふく(旧) | ナノ
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第三関門である地雷原へとたどり着いたときには、既に緑谷くんは1位でゴールをしていた。
スピーカーからはゴールをしたのが20名を超えたことを伝えるのみで、それ以外の情報は無い。
前を走る人の数はおよそ20人以上。
彼らに追いつくためにはなるべくスピードを殺さずにここを通過する必要がある。

前の人達が地雷を避けていった足跡を辿り、走った。


ゴールであるゲートが見えてきたところで、ゴーグルをしている女子生徒と吹き出しのような顔をした男子生徒を追い越す。
黒髪の女子生徒まであと10mも無いところでゲートをくぐり抜けた。

『40人目がゴールしたぞ!!残りの生徒もきばってけよー!!』

アナウンスによって自分が40番目にゴールをしたことを知る。
順位の変動等が無ければ自分は40位、目標順位よりも低い。
不測の事態だったとは言え適切な対処をすることができなかった自身を悔やむと共に、レースの最中には感じることの無かった右手首の痛みがぶり返してくるのを感じる。
主審である香山先生に声をかけ、リカバリーガールの待機している保健所へと向かった。


『リカバリガール出張保健所』とファンシーな看板のかけられた部屋をノックする。

「ミッドナイトから連絡があったよ。そこに座りなさい」

部屋の中にいたリカバリーガールに丸椅子を指さされ腰かける。
右腕に巻いたジャージを解くと、先ほどとは比べ物にならないくらい手首の周りが腫れあがっていた。

「こりゃ、骨折しちまってるね。やったのは同じクラスの子だろ?全く最近の子は限度ってもんを知らないんだから……」
「っ、見ていらしたんですか」

治療のためにリカバリーガールに手を掴まれ、思わず痛みに顔を顰める。
周囲にはカメラロボはいなかったはずだが何故知っているのか。

「観客に見せないにしても何かあったときのために教員たちは見てるもんだよ。アンタのアレも褒められたものじゃないけどね。正当防衛って言うにしちゃ、度が過ぎてる」

アレ、というのは速見の首を絞めたことだろう。
リカバリーガールの言葉に何も言い返せずに黙って治療を受ける。

緑谷くんの名前を聞くことがなかったら、それこそ速見を窒息させてしまっても構わないと本気で考えていた。
あの時、骨折の痛みと速見の言葉にどうしても我慢できず普段なら自制できるはずのことが出来ず、我を失っていた。
理由が何であれ、自分が何のためにここにいるのかを忘れ目先のことに囚われてしまったのだ。
緑谷くんであればこんなことにはならなかっただろう。

「まぁやっちまったことは仕方ないね。次から気をつけなさい……ハイ終わりだよ」
「ハイ、ありがとうございます」

腫れの引いた手首を回してみる。
いつもと変わらない調子であったが少し疲れを感じた。

「少し体力を削ってリカバリーしたから倦怠感とかあるだろうね。ベッドで休んでいくかい?」
「予選がまだ終わっていないので……大丈夫です、ありがとうございます」
「……そうかい、無理するんじゃないよ。もう体力削ってやってるから、2度目はリカバリーできないと思いなさいね」
「はい。失礼しました」

頭を下げて保健所を出る。
廊下に設置されたスピーカーから全生徒がゴールしたという放送を聞き、駆け足でフィールドへと戻った。




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