全生徒が一斉にスタートゲートへ走り、ゲート内はほとんど身動きが取れない状態となり、そんな中、前方から足元を氷が襲いかかり咄嗟に棒を支えにし跳んで避けた。
棒の凍結部分を蹴り砕き、足止めされた人達の間を縫って走る。
轟さん、という女子生徒の言葉にこの氷結は焦凍によるものだと知った。
第一関門である、大型のロボと一輪型のロボに道を阻まれる。
ヒーロー科の入試で仮想敵として用いられたものらしい。
人の頭の間から先頭に立つ焦凍の姿が見えた。
焦凍の個性によって襲い掛かろうとした大型ロボがその体勢のまま凍結していく。
凍結したロボの下を焦凍が通った瞬間、不安定な体勢をした大型ロボは大きな音を立てて倒れていった。
衝撃で砂煙や細かなロボの部品が舞い、左腕で顔を覆う。
個性を上手く使い、レースの攻略と妨害を同時にこなした焦凍。
その姿は大型ロボに阻まれ、既に見えなくなっていた。
「お、おい……誰か下敷きになったぞ!!」
「死んだんじゃねえのか!?死ぬのか、この体育祭!!?」
砂煙で見えなかったが誰かがロボの下敷きになったらしく、辺りは騒然とした。
死、という言葉にたじろぐ人が何人かいたが、倒れたロボから赤髪の男子生徒が装甲を突き破り出てきた。
『1-A、切島潰されてたー!!』
切島と呼ばれた男子生徒に続いて、鋼色をした男子生徒も倒れたロボの中から出てきた。
『B組鉄哲潰されてたー!!ウケる!!』
A組とB組の生徒であるならば、本選に出場する可能性は高い。
詳細は分からないが、ロボの下敷きになっても無傷ということは体を硬化させることのできる個性なのだろう。
『1-A爆豪、下がダメなら頭上かよー!!クレバー』
爆豪勝己が掌の爆風を利用し、大型ロボの頭上を飛び越える。
それに乗じて2人の男子生徒も爆豪勝己と同じように個性を使いロボの頭上を飛び越えていった。
下ではそれぞれが個性を用いて小型のロボを撃破していく。
実戦経験が活かされているのか、攻撃に迷いの無い生徒のほとんどはA組だった。
緑谷君を見ると、大型ロボの装甲を用いて一輪型ロボを撃破していた。
彼も道具の使用許可願いを出していると思っていたのだが、ヒーロー科は別なのだろうか。
一輪型ロボは動いている標的を捕捉し攻撃するまで追尾するシステムのようで、追尾中は標的以外には目もくれない。
また捕捉している間は常にそ標的にだけ、レンズを向けているという特徴がある。
大型ロボは攻撃範囲は広く攻撃力も高いが、機動力は低く動作も大振りであるため視認してからの回避で問題無さそうだ。
一輪型ロボのレンズの向きと大型ロボの動きに注意しながら前に進む。
死角となっていた大型ロボの前脚の影から一輪型ロボが現れ、レンズのピントを合わせる音が鳴った直後、一輪型ロボが駆け出してきた。
一輪型ロボの爪が体に触れるギリギリで左に避ける。
タイヤ走行のロボは急には止まれないため、方向転換するためにはわずかに遅れが生じる。
そのわずかな時間の間にロボの背後に回り、レンズを向けたと同時に右手に持っていた棒を槍のようにレンズに向かって投げる。
投げた棒はレンズを突き破り、ロボの頭を貫通した。
頭部が大破したことによってロボが倒れ、動かなくなる。
機動力はあったが想定外の脆さだった。
頭部から棒を抜き取り、他の生徒の個性によって倒れた大型ロボを避けて先へと走った。
階段を上った先には、第二関門である無造作に建つ石柱群が広がっていた。
石柱同士は綱で繋がれており、全部で5つのルートがある。
ルートによって綱の長さや太さが違うようだ。
梅雨ちゃんが綱を渡っていくのが見える。
そのすぐ近くではサポート科の生徒だろうか、女子生徒が背中につけたワイヤーフックを使い石柱を登っていた。
彼女に続き、お茶子ちゃんも走りだした。
私も負けていられない。
たるみの少ない綱に足を乗せ、駆け出した。
← →
back
.