明日は明日の風がふく(旧) | ナノ
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我が家では父が弁当のため、私の分も母が一緒に作ってくれる。
雄英にはランチラッシュが総括している食堂があるが、いくら安く提供しているとはいえ毎日学食となると費用もかさむ。
特待生であっても食費は学生支払いのため、私はいつも教室のある階に作られているフリースペースで食事をとっていた。

雄英の外に面した壁はガラス張りのため、景色を眺めながら食事をする。
ほとんどの学生は食堂か教室で昼食を摂るため、昼時とは言え人の少ないフリースペースは勉強するにも都合が良かった。

今日の午前中の授業の復習をしていると、突然警報が鳴り響いた。


『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外に避難してください』

セキュリティ3、校舎内に不審者が侵入したらしい。
入学時に配られた緊急時の対応として書かれていた通りにグラウンドへと向かう。

雄英のセキュリティ機能は常に最新のものであり、不審者対策は万全とされていたのに、一体何故。

非常用階段を使い地面に降りたところで、校舎の角を曲がろうとした瞬間、曲がり角から人が現れたため咄嗟に後ろに下がる。


「あぁ、見つかっちゃった。ゲームオーバー?か?残念」

寝巻きのような私服姿の男は残念そうな素振りも見せずに、そう言った。
休憩中の職員というにはあまりにも身だしなみがなっていないし、部外者が校内へ入るときに必要な腕章も付けていないことから、OBということも無いだろう。


雄英のセキュリティ機能が正常に作動しなかった原因として考えられるのは大きく2つある。

1つは単純にメンテナンス不足などによるシステムの誤作動。


そしてもう1つは、能力の違法行使によってシステムが何らか異常をきたしているか。


「でも、あんたが黙っててくれたらコンティニューできるわけだけど」
「……部外者の方は事務室で訪問許可章を受け取る規則のはずですが」
「そんな堅苦しいこと言うなよ」

嘲笑するように笑う男が、一歩ずつ歩みを進める。
それに合わせて一歩ずつ下がる。男との距離は約5m。
男の個性が何か分からないために、これ以上距離が縮まるのは危険だった。

「何で離れるんだよ。傷つくだろ?……まぁ、やりたいことはやったし、今日はもう帰るよ」

そう笑顔で言って、男は背を向けて歩きだした。
振り向いて襲ってくることを警戒したが、男は振り向くことなく塀を飛び越え、姿を消した。

「……ハァ」

男が消えたあと、緊張の糸が解け、深く息を吐いた。

あれは敵というのだろうか。
今までニュースや新聞で見たような明確な悪意ではなく、得体の知れない恐怖を感じ、しばらくそこから動けなかった。


グラウンドへ向かうとクラスごとに整列がされていた。
列の一番前で立っていた石山先生に不審人物に会ったことと背格好を伝えると、普段の先生からは考えられないほどに表情を堅くされていた。





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