明日は明日の風がふく(旧) | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


緑谷くんがどこの学校のヒーロー科を受験するのか分からないが、一般入試であるならそろそろ合否の発表があるだろう。

不法投棄されたゴミが全て片付けられた沿岸を見たときには既に緑谷くんはいなかったが、近隣の住民達が驚いた表情をして沿岸を歩いていた。
誰がやったんだ、凄い、と言っている人達にここのゴミを片付けたのは1人の無個性の少年なんだと言いたい気持ちになった。

後日、新聞の地方ニュース欄でゴミ捨て場から観光スポットへと変化を遂げた海浜公園として、ニュースに取り上げられた。
一体誰がゴミを片付けたのか、1人なのか複数人なのか、とあらゆる考察がされていたが、文末はここの海浜公園が綺麗になったことをきっかけに他の地域でも清掃活動が活発に行われるようになったという風に占められていた。

緑谷くんの行動が世間に、他の人に影響を与えている。
新聞を見て、本当に緑谷くんは凄い人だと改めてそう感じた。


新聞を見た翌日、いつものように走りにいくと、海浜公園の入り口の前で立っている緑谷くんを見つけた。
緑谷くんも私に気付いたのか、縮こまりながら胸のところで小さく手を振っていた。

「緑谷くんおはよう。凄いね、本当にゴミ1つなくなってる」
「お、おはよう。ありがとう。入試の日に何とかギリギリ終わったんだ」
「入試終わってたんだ。お疲れ様」
「あ、いやいやありがとうございます……」

そう言うと緑谷くんは忙しなく視線を彷徨わせ、深く息を吐くと真っ直ぐに私を見た。


「つ、塚内さん……僕、ヒーロー科の入試受かったんだ!」
「っおめでとう!!」
「……応援してるって言ってくれたのは、塚内さんが初めてだったんだ。……本当に嬉しかった……ありがとう」

涙目になりながら頭を下げる緑谷くん。
誰かに応援してもらえることでどれだけ頑張れるのか、私が一番よく知っている。
そう考えると私は本当に家族に恵まれていたんだろう。

「……なんにせよ受かって本当に良かったね。緑谷くんはどこの学校のヒーロー科に受かったの?」

「えっと、雄英、です」


多分その時の私は鳩が豆鉄砲を喰らったような、そんな顔をしていたかもしれない。

無個性である緑谷くんが最難関と言われるヒーロー科に受かったというのか。


「雄英のヒーロー科なんてすごいじゃないか!おめでとう!」
「ありがとう……」
「そっか、雄英か。実は私も雄英なんだ。普通科だけどね」
「えっ!?そうなの!?」
「そう。春からよろしくね緑谷くん。……そろそろ行くね。合格したことを伝えてくれてありがとう。それじゃあ雄英で」
「う、うん。時間取っちゃってごめんね。は、春にまた!!」

互いに手を振って別れる。


結局、無個性であるということは言えなかった。





back



.