明日は明日の風がふく(旧) | ナノ
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翌日、職員室にいた担任に改めて合格したことを伝えた。

「塚内、合格おめでとう。俺の見込んだ通りだったな」

そう言った担任と何故かそこには教頭と校長もいた。
うちの中学校では雄英に入学した生徒は初めてだったからのようだ。

普段あまり話すことのないクラスメイト達も、このときは私の机の周りに集まり、口々に話していた。

「赤音ちゃんおめでとう!雄英なんてすごいね!!」
「お前ならやると思っていたんだよなー」


無個性が受かるはず無いと言っていたのに、随分都合がいいな。

そんなことを思いながら、ありがとう、と言葉を返した。


塾へ行くと、合格者と受験校が貼られる掲示板に私の名前が書かれた紙が貼られていた。
ロビーでやたら視線を感じたのはきっと、これのせいだったのだろう。

教室へと入ると、騒がしかった教室は静まり返り、視線は一斉に私に向けられた。
その視線は明らかに好意的なものではなく、席に着くと何事も無かったかのように教室は賑やかさを取り戻した。


「あいつ、特待入試受かったんだな」
「すげー」
「でもどうせ普通科だろ?」
「てか、あの子まだ来るの?」
「何か嫌味っぽいよね。こっちはまだ入試やってないのに」

わざと聞こえるように言っているのか、背後からは呟き声とは言えないような会話が聞こえる。

今月の月謝分は塾へ行こうと思っていただけで、別に嫌味のつもりも何でもないのだが、どうやらあの人達の考えは私とは違うらしい。
受験のストレスでも溜まっているのか、見当違いな事を言っている彼らにため息を吐きたい気持ちを感じながら堪えた。

突然何かを叩きつけるような大きな音が聞こえ、思わず後ろを振り返る。

「お、おい……爆豪、どうしたんだよ?」

そこには、机に足を乗せる爆豪勝己の姿があった。
爆豪勝己の近くにいた男子生徒が恐る恐る話しかける。

「あのクソナードの話を聞いてるだけでむかついてくんだよ。てめえらそれ以上喋ったらぶっ殺すぞ」

本当にやりかねない目付きをした爆豪勝己に睨まれ、話をしていた人達は顔を青ざめさせながら、口を閉じた。

暴力沙汰を起こしそうになったあの時以来、爆豪勝己は私との接触を禁じられ、爆豪勝己がどんなに私に腹立てようとも手出しできない状態にあった。

下手に大事にしてしまうと家族に心配されてしまう可能性あったから、私としてはこの対応に満足していた。
それに精々あと数回顔を合わせるだけだ、と考えるとどれだけ睨まれようとも何か思うことも無くなった。

おそらく爆豪勝己は雄英のヒーロー科に合格するだろうが、ヒーロー科は普通科とカリキュラムも違うため、こちらが意識していれば顔を合わせることも無いだろう。


それよりも一番気にかかっているのは弟の焦凍のことだった。
きっと焦凍はヒーロー科を目指しているだろうし、きっと雄英に入学してくるだろう。そんな確信があった。

焦凍に大嫌いと言ってしまったあの時から10年が経っている。

私のことを憎しんでいるかもしれないし、もしかしたらもうとっくに忘れてしまっているかもしれない。

もし、顔を合わせてしまったときになんていえばいいのか、ずっと考えているが答えが出てこない。

自分から焦凍を傷つけたくせに会話の糸口を探そうとしている自身に、嘲笑するしかなかった。






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