07 side京平



親戚が集まって宴会をしている中で見知らぬ番号からの着信。
携帯を見つめていると叔父さんに彼女からか?と茶化されうっかり通話ボタンを押していた。
しっかり否定をしてから電話に出る。
こっちから声をかけても無言、いたずら電話だったか?
うるさい部屋の中で耳を澄ましてよく聞いてみる。
すると一瞬だけあの懐かしい呼び名が聞こえた。
小さく、微かだったが間違いなくドタチンと言ったのだ。
俺はそのまま部屋を出て自室に戻る。
電話の先で臨也は泣いている。
留学から帰ってきて連絡しようとしても携帯に繋がらなかった。
その理由は新羅から静雄がバカをしたからだと話で聞いていた。
でも良かった、こうして連絡してきてくれて。
けどどうして泣いてるんだ。
そんな声が聞きたいんじゃないんだけどな。
どうやら実家に帰ってきているようで、俺は臨也の家に走った。

部屋でぐすぐす泣いている臨也を見たとき、静雄を殺・・・じゃなくて説教してやろうと思った。
だって俺たちがお前を応援してたのは臨也を泣かせるためじゃないからな。

「ドタチン・・・ごめん。」

多分、連絡をしなかったことや今こうして呼び出してしまったことに対しての謝罪なんだろう。
けど俺は怒っていない。そりゃあ連絡がつかなくなった時は少なからずショックではあったが。


「いいさ、それでどうしたんだ?」

話はやはり静雄のことだった。
あぁもう本当に静雄のことを殴らないと気がすまない。
こんなに臨也はお前を好いていたのに、何だよ忘れてたって。最低じゃないか。
そういえば新羅は静雄に臨也がよく行くカフェを教えたって言っていた。
あいつ臨也のこと探すって言っておきながら何やってんだ・・・。
そうじゃなくてもお盆の時期なんだから実家に戻ってくることとか考えろよ。

「俺、シズちゃんのこと忘れられるのかな。」

ここで俺は知っていることを話すべきなのか。
でもどっちにしろ静雄が臨也の前に姿を現さないっていうのがおかしい。

「静雄を信じろ、臨也のこと嫌うわけがないんだから。」

「でもっ、だったら何で・・・!」

「きっと静雄は今でも臨也が好きだ。俺はそう思うよ。」

こんなことを言うと臨也を苦しめるだけかもしれない。
けれどこれは間違っていないと思う。
静雄のバカのためじゃない、臨也を幸せにするために2人を繋ぎ留めたかったんだ。




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