アンケートおまけ再録/佐助/情事後




何時も思う。

行為後のこの冷めた感情は一体どうした事だろうと。
きっと、吐精したその時に心に焼き付く情熱すら放出したのかもしれない。
残るは気だるい躰とまだくすぶり続ける体温だけ。
額に張り付く少し湿った前髪を書き上げた。


「……あんたさぁ、俺のどこが好きで抱かれてんの」

沈黙に耳が痛くて何となく問い掛けてみる。
何時も思う。
男が男に組敷かれ、鳴かされるというのはとても屈辱的な事だろうと。
しかも座卓の前で肩越しに振り返り、訝しげに片眉を跳ね上げているこの男は何気に自尊心が高く、受動的でも何でも無い、どちらかと言えば"抱く側"に属する男だ。
更に付け加えるならば、ほんの少しの加虐趣味も持ち合わせている。
少年と青年の間中にいた頃までは、そりゃあ小姓だったのだから仕える者に夜伽をする事もあっただろう。


だが、それも昔の話。
花も恥じらう少女のような姿だった昔の話。
今は女を抱いた事も有れば、自分が小姓に仕えられる側なのだ。
しかも無愛想だが顔は良い。
筋骨隆々の漢とはいかないが、長身のしなやかな体つきに繊細そうな指先はまるでご贔屓抱える女形のようにも見えるのだから、ちょっと表情を和らげさえすれば女の方から寄ってくるだろう。
女にも小姓にも不自由無い恵まれた条件を兼ね備えていると言うのに、何故自分に組敷かれるのをよしとするのか。
それが疑問だった。
余り見慣れない白い襦袢に身を包み、座卓に向かう和臣は何だか焼けに薄闇から浮いて見える。

まるで亡霊のようだ。
事後の余韻も残さない仕事の虫は、筆も置かずに思案した。

「知りたいか」

「知りたいから聞いてるんだけど」

そうかそうだったな、何てすっと惚けた事を言った後ほんの少し目を伏せる。

「そうさな。
一言で言えば」

そして、佐助を射抜いた。


「身体だな。
お前の身体は具合が良い。
だから抱かれているんだよ」

「は……」

ポカンと間抜けに開いた口が塞がらない。
何を、何をこいつは言っているんだと。
こんな冗談を饒舌に語るような奴だったか。
いや、普段の夜鳥和臣という人間からはそう言った要素は見いだせない。
では本気、と言う事か。
表情は至って真面目、戦前の口上を述べる時のように真剣で嘘偽りは無いように見える。
本気か、本気なのか。
これは……喜ぶべきなのか悲しむべきなのか。
具合が悪い、と言われるよりはずっとマシかもしれないが、何とも素っ気なく恋情の"れ"の字も無い理由。

本気か、本気なのか。
所で、それを聞いた自分はどう返せば良い。







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