学パロ/連載無視/不健全
俺のノックは固い、らしい。
それは多分、指の節を使ってノックするからだろうとその人は言いながら値の張りそうな机に後ろから押さえ付けた。
随分と腕をきつく握り締めるものだからくっきりと跡が残り、皆に言い訳するのも苦労したものだ。
「夜鳥です」
「入りたまえ」
何にしても跡を残さないでくれと頼んでみようか。
いや、もし俺がそう言ったならば逆に嬉々としてより濃く跡をの残すに違いない。
松永副理事とはそう言う人間だ。
「こうも頻繁に呼び出されては困ります」
組んだ両の手に顎を乗せた副理事に訴える。
「授業はないはずだが?」
「授業はなくともやるべき事はあります。
それに、皆におかしく思われるでしょう」
眼鏡のブリッジを押し上げながらそう言えば、副理事は人の悪い顔でニヤリと笑った。
「私は卿の困った顔が見たいのだよ」
青筋が立ちそうだ。
立場と弱みさえ握られていなければ、三発くらいは殴らせて頂きたい。
三ヶ月程前、俺は副理事長室に呼び出された。
内容は何故、俺が教師をやっているかについてで、その理由がこの人にばれてしまったのだ。
俺が何故教師をやっているか……それは俺の受け持ちのクラスにいる生徒、政宗様の護衛のためだ。
伊達家の跡取りである政宗様を守るため、俺は正体を隠しこの学園の教師として側にいなければならない。
一人の生徒のために教員をしているなど外にばれたら問題だ。
それを最も最悪な人物、松永副理事に知られてしまった。
滅多に姿を表さない理事長の変わりに、学園の実権を握っている副理事は俺を呼び出してこう言った。
"私は卿に興味がある。
卿が素直になるのならば、この事は私の胸に留めておいても構わないが?"
何とも悪どい。
時代劇の悪代官も驚きだ。
しかし、これは好都合とネクタイに掛かる手を振りほどかなかった俺も越後屋と同じかも知れない。
「私を置いて考え事かね」
はっと気がついたらもう遅い、副理事はかろうじて微笑んでいるが明らかに不機嫌だ。
目が、瞳が全く笑っていない。
「あぁ、卿のせいで随分と時間を無駄にしてしまった。
次の授業まで残り少ないので少々手荒にさせて貰うが……異論は無いだろう?」
立ち上がった副理事が俺の眼鏡を乱暴に取り、何故か自分の胸ポケットへとしまった。
とりあえず、今は余計な事を考えるのは止めておこう。
次の授業に無事出れるかどうかは、俺自身の頑張りに掛かっているのだら。
夜鳥先生は眼鏡+スーツで