佐助と主人公



「好きだ」

顔を赤らめつつも真剣にそう言うものだから、こいつは遂に本の読み過ぎで頭がおかしくなったんだと思った。



「え、あの、大丈夫?」

「……失礼な奴だな」

ぷいと拗ねた様子にキュンと来る俺様もおかしい。

失礼と言われても疑うのは無理ない話だろう。
あの和臣が、無愛想で朴念仁で冷たくて何かと理屈っぽい、あの和臣がそんな……好きだなんて。
しかも普段から軽口ばかりたたき合う自分に向けてなんて。

「俺だって、たまには素直になることもある。
お前と顔を合わせれば憎まれ口ばかりだが、お前がいないと何故か寂しい。
お前が女の尻ばかり追い掛けているのを見ると無性に苛立つ。

……もっと俺の側に居て欲しい、等と思ってしまうのは不愉快か?」

砂を吐くような甘い言葉に目眩がする。
顔が熱くて、心臓が五月蝿い。
しおらしい和臣の姿にこれ以上ない程、動揺している。

何も言えない俺様を勘違いしたのか、和臣の表情が悲しげなものに変わり理性が振り切れた。
その腕を引いて抱きしめる。
驚いて身体を強張らせた和臣も、そろそろと俺様の背中に腕を回した。


「……佐助」

そんな掠れた声で呼ぶのは反則だ、どうしてくれよう。
耳元で囁く声に快感が走る。


「好きだ」








「邪魔だ」

ぼて、と蛙が潰されたような音を立てて、俺様は地面に落下した。

「敵の屋敷で眠りこけるとは、お前は馬鹿か。
しかも縁側に寝るな、非常に邪魔だ」

地面に突っ伏したまま見上げれば、山のような本を両手で抱えた和臣が何時ものしかめた眉に冷えた目。
自分は足で蹴り落とされたのだと悟る。

ぽかんとする俺様にあからさまなる溜息を吐くと、呆れたとばかりにその場を去っていった。


あれ?あのしおらしい姿は夢?


「……そうですよねー」

乾いた俺様の笑いはやけに自分を痛めつけた。





はい、夢落ち




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