学パロ/連載無視/夜鳥先生と副理事の続き?




外はどんより曇り空。
時刻は只今、午後7時45分。
部活をしていた生徒も、残業していた同僚たちもさっさと帰っていった薄情者。
いくつもの校舎の窓は空と同じどんより暗く眠っているのに、明々と光る教室が一つ。



「せんせーは本当の所、年幾つなの」

チクタクと刻む時計の針。

「せんせーって彼女作んないの。
結構女子からも人気あんのにもったいない」

カリカリ走らすシャープペンシル。

「……少しは黙って集中しろ。
いつまで経っても帰れんぞ」

眉間に皺を寄せて言えば、終わりましたーと突き出される問題用紙。
だったら早く言えという言葉は飲み込んで、赤ペンを握り採点を始める。

丸、丸、丸、丸。


ここが小学校なら花丸に良く出来ましたを書き添えたいくらいの素晴らしい解答に溜め息を吐いた。
こんなに出来るのに、何故赤点を取る……と。
しかも佐助の赤点補修は今回だけじゃない。
ある時は満点、またはそれに近い点数を取って問題なく終えるのに、時々今回のようなとんでもない点数をたたき出すことがある。明らかに故意に。
しかも和臣の担当する教科だけ。

その度に無駄な補修をして、その度によくわからない面倒な質問を繰り返してくる。
噂に寄れば、この佐助という生徒、依頼があれば学園内の情報を集め売っているという話。
まぁ噂は噂に過ぎないかもしれないが、ここまで熱心に質問攻めにされれば真実かもしれないと疑うのも通り。

「お前はやれば出来るんだ。
これからは赤点何か取らないようにな。
こんな遅くまで補修させられるのはお前も嫌だろう」

「べっつにー。
俺様は嫌だなんて思ってないよ」

両手を後ろ頭で組み、背もたれに身体を預けて椅子の後ろ足二本だけでバランスを取る。
このギィギィと悲鳴を上げる金属音がどうにも苦手だ。

苦手といえば、この掴み所のない生徒も和臣としては苦手の部類に入る。
以前から妙に考えが達観した生徒だとは思っていたが、その頃は苦手というほどの感情は抱いていなかった。
格好は派手だが目立った悪さはしないし、成績も良いし、同じクラスの真田の面倒をよく見ている大人びた生徒……そんなイメージだったのに。

いつからか。
いつからか苦手などと思うようになったのか。
いつからか佐助は態とらしく赤点を取るようになったのか。


「あ、もしかしてせんせーってさ、若い子はあんまり好きじゃないとか?」

机越しに身体を乗り出す。
何を馬鹿なと呆れた、その時、佐助の目が意味ありげに細められ、口角がにんまりと持ち上がる。




「年上が好き?

年上のスーツ着た、オ、ジ、サ、マ……
とか」



ヒヤリと心臓が冷えた。
明らかに何かを含んだ、いや、知っているぞと言わんばかりの口調。

そう、副理事と自分の関係を知っていぞと暗に言っているのだ。
直接は見ていなくとも、副理事室から出て行く自分を何度か見かけて感ずいた可能性もある。
いや、絶対に直接は見ていないだろう。
鍵も必ず掛けているし、カーテンも勿論閉めきっている。
自分も副理事もそこまで間抜けじゃあない。

となればカマを掛けて疑惑を確かめているのか。
「!」

赤ペンを握ったまま思案する和臣の手を佐助が掴む。
咄嗟に引こうとしたがその力は思いの外強く、逃れられない。

「若いのもいいと思うよ。
どう、試してみない」

「……っませ餓鬼が」

素が出てしまい、教師らしからぬ舌打ちをすればそれは佐助の思う壷。
身を乗り出し、顔が近づいてくる。
片手を机に押し付けられたままなので、顔を背けて抵抗したのだが顎に手を掛けられ無理矢理互いを見据えさせた。
その腕をもう一方の手で和臣がギリギリと痛いほどに握る。眼鏡の奥の冷たく鋭い睨み。



それすらも佐助は面白いとばかりに微笑み、唇が、触れる寸前。







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