俺のクラスに、少し変わった女の子がいる。立海大附属中学校はテニスの強豪校で、現に俺が率いる今期のテニス部だって相当な数がいるし、そこで勝ち上がったレギュラー陣は人気があるものだ。(と思う)
大体の女子はレギュラー陣が通ると色めくし、黄色い声だって聞こえる。それはクラス内でもそうだ。けれど、1人だけ俺たちに興味を持たない子がいる。苗字名前さんだ。

「やあ、おはよう」

「え?ああ…おはよ」

こういった感じで、俺たちに話しかけられても普通の挙動をする苗字さんは、やっぱりこの中では異質だと思う。黒髪をさらさらと靡かせながら、友人と思われる女子生徒の元へ急ぐ。
顔を赤らめるでもなく、ただ普通の生徒、いや、普通よりか少しだけ冷たい態度をとる彼女に、俺は興味が湧いてならない。





▽△▽




「蓮二、文通相手とはどうなったの?」

「精市か。どう、と言われてもどうもしないぞ。いつも通りだ。」


初めてのテニスをしたらしい、と呟くレギュラーメンバーである柳蓮二は、最近文通相手ができたらしい。それも、移動教室の机を介して文通なのだから面白い。机に落書きなんて、あの真面目な蓮二がするだろうか。そんなにも、興味を惹く人なのだろうか。

実のところ、蓮二の文通相手は俺のクラスなんじゃないかと思ってる。
理由は少し考えれば簡単なものである。蓮二が文通相手のことを話すときは大体俺らのクラスが前日に多目的Bを使っているし、初めてのテニスなんてきっと体育の授業だ。他のクラスより少しだけ進みが早かったC組はもう今日で3回目のテニスだったし、C組以外はほとんどテニスに入ってない。つまるところ、俺は今日の蓮二の話を聞いて自分のクラスだと確信したのだ。

クラスの女子なんていちいち覚えてはいないんだけれど、思い出せる範囲で考えてみる。
佐々木さんは所謂ミーハー女子だし、比較的テニス部に興味が無い中村さんはそもそも授業に出ていない。世界史を選択している人は、誰だったっけ。

ぐるぐる思考を巡らせているうちに、ひとりだけピンときた。ピンときた、というより、そうだったらいいなあという願望なのだけど。
その人が、かねてから僕が興味をもつ苗字さんである。


まあ、こんなこと蓮二には言わないんだけどね。
たぶん蓮二も、進んで謎の彼女のことを調べるなんて思っていないのだろう、今は。なぜなら彼はテニス部きっての秀才で、そんなにヒントがあるのだから女子生徒1人を特定することくらい造作もないのだから。
だから俺も余計な口出しはしない。面白ければ、いじることはあるだろうけど。
だから俺は、心の中で密かに蓮二の文通相手が苗字さんだったらいいなあなんて思ってる。思ってる、だけだ。




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