今日はとてもきれいな星空だった。思わず立ち止まり見上げる。暗い夜にぽつぽつ、と白い輝き。屋上とはいえここは東京、繁華街はまだまだ明るくきらきらとした人工的な光が闇を蝕んでいた。ほう、と息を吐けば白く染まる。風はないはずなのに頬を撫でる冷気が痛かった。ねえL、あなたは幸せだったの、なんて一人で問う。答えてくれる人なんていないはずなのに。

いつでも「名前さん、」と呼んでいた声が懐かしい。彼はいつでも独りだった。一人で考え、一人で決断。そして一人で行動する。そんな人だ。ヒトとの馴れ合いを好まず、顔すら公表せずに事件を解決してきた。いつもひとり、
彼は幸せだっただろうか?

わたしはLの助手、とはいい難い距離感で接してきた。わたしは彼に惹かれてたけど、今となっては貴方がどう思っていたのかもわからない。もしかしたら嫌われてたのかもしれない。ただの仕事、任務、それ以上でも以下でもない
でもわたしは誰より彼の傍にいた。けれど彼を、彼たちを助けることはできなかった。ただただ、彼の細い身体が横に倒れていくのを見ているだけだった。涙も出ない。酷い女だ、血も涙もない、笑ってしまう

L、と先程より小さな声でつぶやく。か細いそれはいとも簡単に闇夜に呑まれてく
Lと同じくワタリも亡くした。ワタリはLの片腕。彼の心のそばにいたのはいつだってワタリだ。そんなワタリの身に何かあったと知った直後、自分の死。

彼の中には絶望しかなかったのではないか。あと少し、解決まであと少しと志半ばでの死。ワタリも同じ気持ち、そして、わたしも。

「ねえ、L、キラはニアが捕まえるわ。覚えている?ニアよ、N。」

ニアにはもう言ってあった。キラ事件を絶対に解決してくださいと、頭を下げた。ニアは表情少し変えず、もちろんですと答えたのをよく覚えている。まるでその姿はLだった。

もう一度足下の東京の繁華街を見る。眩しいほどにがやがやと賑わう人々にわたしの姿はうつらない。笑い声がする。それがまるで、わたしを嘲笑っているかように思えて、自分でも少し笑えた。後追いなんて、時代が古いわね。同じ志を持って事件に関わってきたつもりだったのに、最期には人を追って死ぬ。なんて自分よがりで、つまらない人生だっただろうか。それでも、わたしは彼の傍にいることを選んだ。約束していたのだ。独りぼっちだった彼に、わたしがいると、独りじゃないと、約束したのだ。

「大丈夫、L、あなたを独りにはしないわ」

繁華街を背にして、スローモーションのように身体が傾く。脳裏にはこれまでのLとの思い出の数々。これが走馬灯というやつだろう。最期の最後にいいものが見れた、なんて笑う。
ふわふわ、と浮遊感。何故だか涙が出た。霞む視界でもういちど夜空を見ると、先程よりも星が煌めいて、わたしの最期にぴったりね、と自信ありげに笑う。そして視界の端には、キラについてるらしい黒い死神が弧を描いて笑ってる。そう、あなたにはこの運命がわかっていたのね。

涙と笑いが止まらなくて、止めたくて、瞼を閉じた。





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