ジャック・オ・ランタン


「今でこそジャック・オ・ランタンってカボチャだけど、もともとはカブで作ってたらしいぞ。アメリカだとカボチャがよく採れたからカボチャになったらしい」
「で、それとこの大量のカボチャは何か関連性があるのか?」
「正直すまんかった」

目の前には、大小さまざまなカボチャたち。
スタンダードに、きれいなオレンジ色のものもあれば、白っぽい縦縞の入ったストライプのカボチャなんてものもある。リビングが収穫祭になっている様子を見て、二宮はため息をつき、頭を抱えた。

高校を卒業し、美大に通うことになった俺は、通学時間短縮のため、駅近に物件を借りた。同じく通学時間を短縮したかった二宮と、家賃を折半という条件でルームシェアをしている。

共用部分であるリビングがカボチャで埋め尽くされていたら、そりゃ頭を抱えたくもなるだろう。
しかしこれは必要なことである。

「どうしてもランタンを作りたいんだよ……。あ、中身はサラダとポタージュにするから」
「ああ……いや、それはいい。なんでみょうじはランタンなんか作りたいんだ」
「やってみたかったんだよな。カボチャくりぬいてろうそく入れるの」

我が家では、食べ物で遊ぶなという親の言いつけがあったので、なんとなくカボチャでランタンを作ることがはばかられた。
しかし親元を離れた今、目が届かないならばいくらやったところでばれやしない。ちゃんと食べるし。

それに、俺達にはぴったりのものだから。

「二宮、どうせこの後ヒマだろ。くりぬくの手伝ってくれよ」
「青臭くなりそうだな……。……まあいい、手伝ってやる」

口では偉そうにしながらも、さっそく腕まくりをしてナイフを取る二宮も、意外と楽しんでいるのかもしれない。

しばし二人とも無言でカボチャを切り、中身をスプーンでえぐり取る。
きれいに中身をくりぬいたら、マジックでカボチャに顔の下書きをした。

「んー……普通の顔じゃ面白くないよな……。喜怒哀楽で揃えるか……」
「……みょうじお前、美大のくせに……」
「下手とか言ったら超ホラーな顔作るぞ。俺の真価は彫刻だ」
「どうだかな。……というか、ろうそく足りるのか? こんな大量に」
「うん。さっき買ってきた」

大量のカボチャを背負い、さらに大量のろうそくを購入する俺を見て、店員さんは微妙な笑顔を浮かべていた。パーティするんです、と言ったら納得してくれたが、その実二人だけである。切なくなんかない。



くりぬいたカボチャはしばらく乾かした後、装飾を施して、画鋲を底に取り付けた。
俺が作った喜怒哀楽の表情をしたカボチャ、二宮が作ったやたらと可愛らしいカボチャ。悪ふざけで作った割には、案外うまくできた似顔絵カボチャなど、一つ一つにろうそくを置いた。

「……よしっと。うあー、壮観だな、ここまでそろうと」
「さすがに疲れたな。みょうじ、何か飲むか」
「紅茶ー。ブランデー入れて」
「この酒飲みが」

ため息をつきながら、二宮が立ち上がって、台所へ向かっていく。
悪態をついても結局は要望通りにしてくれるのだから、素直じゃない。prev next
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