オオカミ男


(本編のifとしてお読みください)



「なまえ! とりっくおあとりーと!」

半日で終わった大学から玉狛に帰るやいなや、舌足らずな声が、僕の足元から聞こえてきた。下を見ると、大きなカボチャの着ぐるみを着た陽太郎くんが、これまたカボチャの頭巾をかぶせられた雷神丸にまたがっていた。

今日はハロウィン。
隊員同士の結びつきが強い玉狛支部は、支部ぐるみでハロウィンのイベントがある。

僕は鞄から、前日に迅と一緒に用意した小さな袋を取り出し、かかげられたカゴの中にいれた。
中身は市販のクッキーやチョコレートだけど、ハロウィンらしい小袋に包んでそれらしくしている。

「おお! ありがとう、なまえ!」
「…………」
「これ、なまえのぶんだぞ!」

今度は小さな手から、かわいい棒付きキャンディーを受け取った。
笑って陽太郎くんの頭をなでると、彼は嬉しそうに笑って、僕の手をひっぱる。されるがままについていくと、すでに飾り付けられたリビングへと連れていかれた。

「あ、みょうじさん、おかえりー!」
「帰ったか、みょうじ」
『ただいま』

カボチャのランタンが置かれた机の上に、きちんとまとめられていた画用紙を取り、みんなに見せる。
迎えの言葉もそこそこに、黒いワンピースに魔女っぽいとんがり帽子の宇佐美ちゃんが、僕に何かを渡してきた。

「それ、みょうじさんの衣装ね! アタシとこなみで選んだから安心して!」
「…………?」
「レイジさんの? ……なんだろ? とりあえず怪物じゃない?」
「おい宇佐美」

フランケンシュタインと雪だるまが融合したような珍妙な衣装を着るレイジさんは、宇佐美ちゃんのあんまりな言葉に少しだけ顔をしかめた。
苦笑いしながら、もらった衣装を広げる。血が飛びちったようなデザインの白衣だ。

「?」
「ああ、それね、ゾンビ衣装なの。後でメイクするからね!」
『陽太郎くん泣かない?』
「へーきへーき。ちょこっと赤いインクで傷描くだけだから」

彼女がちょっと、と言うと、かなり凝ってしまうのではないかと思うのは、気のせいだろうか。
後ろに特殊メイクセットがあるのを見て、僕は少しだけため息をついた。



「やだっみょうじこわっ!」
「みょうじさん……ついに真の姿に……」
「えっ、そうなの!?」

仮装が完了した僕を見て、スタイリッシュな吸血鬼衣装の烏丸くん、不思議の国のアリス衣装の小南ちゃんがそんな反応をした。prev next
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