ピニャータの中身


「……えっ」

箱の中に入っていたのは、人だった。しかし、ただの人ではない。

俺の恋人、三輪秀次。
その彼が、かわいらしい魔女衣装に身を包んで、手と足をしばられた状態で、箱の中に入っていた。ミニ丈のスカートのすそから、真っ白いふとももがちらりと見えている。眼福である。

いや、そうじゃない。

「みみみ三輪!? な、え、えええ!?」
「……ゥ、う」
「あ、あああごめん、すぐ外すから!」

ご丁寧に口にまでガムテープが張られていたので、慌ててはがす。ちょっと慌てすぎたのか少し痛そうだったが、文句より先に出てきたのは、

「みょうじ、こ、これは陽介たちが!」

という、弁解の言葉だった。

「陽介が、い、いきなりこれを、別におれの趣味じゃっ!」
「よ、米屋? え、えっと、とりあえず何がどうなって?」

二人とも状況が飲みこめないまま、とりあえず腕と足のガムテープもはがした。その間に三輪に聞いたところによると、今日の朝、突然あの3人組がやってきて、あれよあれよという間に魔女衣装を着せられ、この箱に詰められ、俺の家に連れてこられたらしい。

イタズラって、俺に対してじゃなくて、三輪に対してだったのか。
大変グッジョブである。

「へー……あの3人が……」
「……あ、あまり、見るな」

三輪は居心地悪そうに、もぞもぞとさっきから落ち着かない。
だけどこれは、見てしまうのも仕方がない。

魔女の服は、女性用だからか多少胸は余っているし、パフスリーブの袖も腕がきつそうなものの、腰が細いから案外様になっている。
胸元が大きく開いて、胸から腰にかけてリボンの編上げ。スカートは膝上10pくらいのミニ丈。
誰だ選んだの。握手してほしい。

じっと見つめていたら、三輪は首まで真っ赤にして、どうにかスカートの丈を伸ばそうと引っ張った。そうすると胸元が引き下がって、鎖骨がくっきりと。

視線に耐えきれなくなったのか、彼はとうとう、俺に言った。

「みょうじ、その、他の服を、貸してくれ」
「え、嫌だよ」

しかし反射的にそう答えたら、三輪の吊目が大きく見開かれる。

すこしだけ罪悪感もあったが、恋人がこんな格好をしているというのに黙って服を貸すなど、男ではない。据え膳食わぬは男の恥だ。

すべすべの太ももに手を滑らせると、三輪はびくりと体をふるわせた。殴ってしまえば逃げられるだろうに、混乱しきっているのか、そんなことに考えが及ばないらしい。

ぐいぐいと肩を押すと、いつものクールさはどこへやら、彼は慌てふためいた。

「ま、まて、みょうじ、おち、落ち着けっ」
「いや無理。安心しろ、優しくする」
「そ、そういう問題じゃない! いやだ、こんな格好、みょうじっ!」
「大丈夫大丈夫、可愛いから」

涙目になってしまった三輪の頬を優しく撫でて、俺はしっかり彼の目を見ながらもう一度言った。

「三輪、かわいい」
「……ッ!」

じたじたと暴れていた足が静かになり、三輪はさらに顔を赤くして、俺の胸に顔を埋める。ちらりと伺うようにこちらを見上げる目に、色々と限界だった。

いつもはツンしかない三輪の珍しいデレに、心の中で俺は叫んだ。

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