ピニャータの中身


!女装注意!


土曜日、せっかくの休みだというのに、俺は自分の部屋にいた。

朝っぱらから、米屋からおかしなラインが届いたのである。

「明日、絶対家いろよ!!!!!」

たったそれだけ。
理由を聞いても既読がつくだけで、返事は返ってこない。

同じ隊の奈良坂や、米屋と仲のいい出水にも聞いてみたが、みな同じく既読スルー。三輪に至っては既読すらつかない。寝る前におやすみ、とラインを送ったら、それには返してくれたのに。

無視してもよかったが、学校で何か言われるのが嫌で、結局昼過ぎまでだらだらと過ごしている。
暇だからさっきまでネットサーフィンしていたが、それも飽きてしまった。

「……にしても、三輪全然見てないな。寝てんのかな?」

三輪とのトークを見てみるが、既読はおやすみ、を最後についていない。確かに返事が遅くなるのはよくあることだが、ずっと見ていないのは珍しい。
今日は任務もないはずだけど。

電話でもしてみようかな、と無料通話を押そうとした瞬間、インターホンが鳴り響いた。

今日は親が留守なので、俺が出なくてはならない。

ため息をつきつつ、携帯を投げ捨てて、ベッドから起き上がった。


ピンポンピンポンとやかましいのでおそらく知り合いだろうとあたりをつけ、いささか乱暴にドアを開ける。予想した通り、見知った顔が3つそこにいた。

「うーすみょうじ。ちゃんといたな!」
「おいコラ米屋。何だよいきなり家出るなって」
「まーまー。いいもん持ってきたから、そんな怒んなよ」

ケンカ腰の俺を出水がなだめ、台車に乗せた何かを指さす。
気のせいか、わずかに動いたような気がした。

「みょうじ、ちょっとどいててくれ。陽介、出水」
「オッケー」
「任せろ、よいしょ」

奈良坂が二人に指示を出し、米屋と出水は阿吽の呼吸で、台車の上のカラフルな箱を持ち上げた。よくよく見ると、カボチャの切り絵が張り付けてある。ああそっか、今日ハロウィンか。
いやそれよりも俺は、ところどころに空いている穴が気になる。

二人はえっほえっほとカラフルなそれを運び入れ、リビングに置いた。
奈良坂はやりきったような顔でそれを見ていて、何が何だかわからない。

「なあ、本格的になんなの、ソレ」
「これか? あれだよ、あれ。えーっと……ピタ●ラ?」
「どこにスイッチあんの? スイッチ押したらお前ら爆散してくれんの?」
「ピニャータだ。外国の薬玉みたいなものだと思えば大体間違いはない」
「今日ハロウィンだろ? だからイタズラしようと思って」

出水はにやにやといやらしい笑みを浮かべている。ろくなことを考えていない顔だ。
イタズラって、まさか中に変なものが入っているのだろうか。

「おい、変なの入ってないだろうな。ネズミとか」
「と、思うじゃん? どっちかっつーと……ネコだな」
「ネコ?」
「開けてからのお楽しみってことで。んじゃ、帰ろうぜ」

米屋は意味深な言葉を残し、奈良坂と出水を急き立てて、あわただしく帰って行った。

何かから逃げるような動作に少しだけ違和感を覚えたが、それよりも箱だ。
ネコだと言っていたが、生き物が入っているのだとすれば、あの穴もうなずける。というか、今も動いているし。

ごとごとと動くその箱を、おそるおそるノックする。途端、ぴたりと動きが止まった。
いよいよおかしい。

薬玉ってことは割るんだろうが、生き物が入っている(かもしれない)のにそんなことはできない。俺はそっと、箱のはしに手をかけて、テープでくっつけられたふたを引っぺがした。
半ばほどまで開けたところで、思わず動きを止める。prev next
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