ジャック・オ・ランタン


よけておいたカボチャの身部分をボウルにまとめながら、使った彫刻刀やナイフなんかを片づける。
後で蒸して、半分サラダ、半分スープにするとしても……量多いなコレ。ケーキかクッキーでも作るか。でもそうすると、甘いものが嫌いな二宮は食べないし。

「二宮、お前の隊にさ、甘いもの好きなヤツっている?」
「甘いもの? ……どうしてそんなことを聞くんだ?」
「こんだけ大量にカボチャあると、二人だけじゃさばききれないだろ。だから何かお菓子作って配ろうと思って」
「…………」

突然、二宮が黙り込んだ。
台所から、二人分のマグカップを持ち、不満そうな顔で戻ってくる。見るからに機嫌が下降している彼に首をかしげると、二宮はつっけんどんに俺にマグを渡した後(わずかに酒の匂いがした)、背中合わせに座った。

「二宮?」
「…………、」
「ん? ゴメン、よく聞こえなかった」
「……配らなくても、俺が食う」
「え?」

何だか今、二宮とは思えないくらい可愛いこと言わなかったか。

思わず後ろを振り向こうとしたら、驚異的な握力で頭をわしづかみにされ、無理やり元に戻された。
360度回転しちゃうかと思った。

「これ俺首270度くらい回るんじゃねえの……。てか、二宮甘いの嫌いだろ」
「みょうじが甘くないのを作ればいいだけだろ。料理と彫刻だけは得意なんだから」
「何々、自分以外が食べるのが許せないってか。可愛いなー匡貴はーあはははははごめんなさい二の腕つねるのやめてください」
「黙れ、なまえ」

実はルームシェア、とは名ばかりで。
本当は、高校を卒業したら同棲しようと決めていた。

「今日さあ、実は付き合って4年目って知ってた?」
「ああ、そうだな。なまえから告白してきた」
「うん。記念にワイン買ってきたんだー。夕飯の時飲もう。カボチャに火つけて」

ジャック・オ・ランタン。
それは、地獄にも行けず天国にも拒否され、安住の地を求めて、カブに憑依した男のこと。

生物的に不自然な恋愛をして、わかっていてもお互い離れられなくて。隠れるように逃げるように、小さな部屋で寄り添って暮らしている。
そんな俺達によく似ている。

「匡貴」
「なんだ」
「手、繋いでもいい?」
「……いいぞ」

背中合わせのまま、恋人の手を握った。

たとえこの地上のどこにも安住の地がなかったとしても、匡貴といれば、俺は満足だ。prev next
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