ジュースでも買いに行こうと作戦室を出て、その向かい側からブリッジした隊長が歩いてきた場合の対処法を、ボーダーも学校も教えてくれなかった。

あまつさえその腹に、文庫本を手にした男が、あぐらをかいて座っている場合なんて。

「……たち……かわさん……?」
「そ、の声は、出水か……?」

弱弱しい声が、床の近くから聞こえてくる。

思わず後ろに引くと、太刀川さんらしき物体は男を乗せたまま、作戦室へと入っていった。途端にぐしゃりとつぶれた音が聞こえて、慌てて中を覗き込む。
ひしゃげたブリッジ太刀川さんと、つぶれる前に立ち上がったらしい男。よく見ると、前に二宮さんと一緒にいるのを見かけたことがある人だった。

抑揚のない声で、その人は太刀川さんにいう。

「5分34秒。34秒オーバーだな、残念」
「いやいやここまでさせといてお前逃げる気かよ。逃がさねーぞ」
「最初から5分って言ってただろ」

涼しい顔で出ていこうとしたところを、素早く復活したブリッジ川さんが捕まえる。

もう結果がなんでもいいから、どうしてああなっていたのかをまず聞きたいのだが。

「あ、あのー……?」
「おう出水、お前からも言ってくれ! たかが34秒くらいいいだろって」
「腐ってもA級1位がこすい誤魔化しするなよ」
「こすくねえ! やばいんだってマジで必修だから落とせねーんだって!」
「いや1年で落としたから今履修してるんだろ」

胸倉をつかんでがくがくと揺さぶる太刀川さんの顔はマジだ。
聞く限りどう考えても向こうの言い分のほうが正しそうなんだけど。いやそうじゃなくてマジで何。隊長が突然エクソシストしてて戸惑わない隊員がいるわけがない。

「えーと、とりあえず太刀川さん何したんですか」
「あ? ああ、レポートやばいから手伝ってくれってコイツに頼んだんだよ。そしたら5分以内にブリッジで作戦室まで来られたら教えてやるって」
「で34秒オーバーしたから断ったところだ」

「あんたらバカですか」

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