「…………」
「? みょうじさん、どないしたんですか?」
シロクマのぬいぐるみを膝にのせて動かないみょうじさんを不審に思って、そちらに近寄りながら尋ねてみた。時折意味不明のことを言い出す人だから、また何かおかしなことを考えているのだろうが。
ぬいぐるみを抱きしめ、みょうじさんは大きくため息をついた。
「いや、別に大したことじゃないんだけど」
「せやけど、なんか考えてたでしょ?」
「うん……。なんか、ぬいぐるみ膝の上にのせてたら、騎乗位してるみたいで興奮した」
聞いたことを少しだけ後悔した。
じゃあそのぬいぐるみを抱きしめてるのは、と尋ねたら、たっちゃった、と恥ずかしそうに言ってみょうじさんは顔をシロクマの白い体に埋める。
これは、騎乗位をしろと遠まわしに言われているのだろうか。
俺がそんなことを考えていたら、みょうじさんはなぜか、シロクマを可愛がりだした。
首を撫でたりキスしたり、手をつなぐみたいにシロクマの前足を握ったり、背中を指でなぞったり。
「……みょうじさん」
「ん、隠岐、どうかした?」
「わざとやっとるでしょ」
「さあどうでしょう」
極め付けにシロクマの鼻にキスして、俺はとうとう、誘いに乗ってしまった。
大きなシロクマをわしづかみにすると、ベッドに向かって放り投げる。
ぼむん、と跳ね上がるぬいぐるみは無視して、みょうじさんの膝の上に乗っかった。固いものが尻に当たり、なんとなくむずむずする。
頬をすべらかな手が撫でていき、肩が跳ねた。
「ぬいぐるみに嫉妬したか? 隠岐」
「させたんはみょうじさんでしょ。ホンマかなわんわ」
「ごめんごめん。で、騎乗位してくれんの?」
「嫌ゆーても、どうせやるんでしょ?」
「うん」
「だったら、早くしましょ」