いつも通り、夜は眠らない遊真に付き合って、玉狛支部の屋上で街を眺めていたときのこと。
それまでぼんやりと空を見上げていた遊真が、唐突に口を開いた。

「死ぬまで好きです、っていうのは、おれが言えばウソにならないな」

いつも通りの平坦な調子で言われて、俺は少しの間、固まった。

どういうことだろう、と考えて、すぐに思い当たる。
しかし間違っていてほしくて、改めて遊真に尋ねた。

「えーと、それは、どういう?」
「みょうじ先輩が考えてる通りの意味だよ」
「……わかりません」
「みょうじ先輩、つまんないウソつくね」

小さく笑って、黒い指輪をつけた手が俺の頬に触れる。遊真は縁に座っているから、いつも俺が見下ろす白いつむじは俺の目線より高いところにある。

遊真が言わんとしていることはわかる。体がゆっくりと死に近づいているから、このまま死ねば、俺を好きなままで死ねるということだろう。
俺のことなんか嫌いで構わないから、長生きしてほしいのだが。

遊真の手を取って引っ張ると、11歳の体はたやすくこちらへ傾いた。

「笑い事じゃないだろ。縁起でもないこと言うな」
「だって本当のことだし」
「そういう問題じゃないっての。……修のことだから、お前がこの先も生きられるような手が何かないかって、今から考えてるはずだぞ。たぶん」
「面倒見の鬼だな、オサム」
「だから滅多なこと言うなって話」

手を離そうとしたら、今度は遊真のほうからつかんできた。指をからめると、先ほど俺がやったように引っ張ってくる。
真っ赤な目とかち合って、視線が逸らせなくなった。

「どうした?」
「みょうじ先輩は?」
「は?」
「おれのこと。死ぬまで好きでいてくれる?」

迷子みたいなその表情と声に、何も言えなかった。

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