「……あの、二宮くん」
「なんだ」
「え、っと……」
僕の上には、常と変わらず仏頂面の二宮くん。目元にクマができてて、ああそういえば、ここのところ出動多かったもんなと納得する。違う、そうじゃない。
なんで僕の上に二宮くんがいて、僕は押し倒されているんでしょうか。
なんらおかしいことはない、という雰囲気でそんなことをしているものだから、おかしく感じている僕がおかしいのかと錯覚する。
それでも勇気を振り絞り、じっと見下ろしてくる彼に声をかけた。
「あの、……ど、どいてくれる?」
「断る」
「えっあ、ハイ……じゃなくて!」
「断る」
「ひえっ」
かぷ、と首筋に噛みつかれて、ぞぞぞっと背筋に何かが走る。
浮き出た首筋を舌でなぞってみたり、唇で柔らかく食んでみたり。まるで男女がするようなそれを、なぜ同性の、ルームメイトにされているのか。
「お、落ち着いて二宮くん! もう今日は寝たほうが、」
「お前を食ったら寝る」
「食うの!? 僕食べてもおいしくないよ!?」
だめだコレ、完全にハイになってる。
服の中に忍び込もうとする手を必死に押しとどめ、どうしたらいいのかをない頭を絞って考える。
殴って止める、は二宮隊から闇討ちされるからアウト。諭して止める、無理。僕はそんなに口が巧い方じゃない。悩んだ結果、採決したのは。
二宮くんの両腕を素早くつかんで、腹筋を使って起き上がる。
反動で彼は後ろに倒れ込んで、ごつんと痛そうな音がした。その間にマウントポジションを取って、あっという間にさっきと状況が逆転した。
きょとんとした顔で僕を見上げる二宮くん。いつもより幼く見えて、なんだか可愛い。
「その……なんか、うまい止め方思いつかなかったもんで……」
「……そうか」
頭を打って多少は冷静になったのか、そんな返事が返ってくる。
それでもやっぱり手が伸びてくるので、仕方なく床に縫い付けた。
僕が二宮くんを押し倒したような恰好になって、ようやく尋ねることができた。
「あのさ、どうしたの?」
「どうしただと?」
「だっておかしいでしょ。よく見てよ、僕だよ。そういうことするなら、普通加古さんとか月見さんとか、きれいな女の子じゃないの?」
「別に好みじゃない」
「ああうん、じゃあ二宮くんの好みの子」
駄目だ、この人本格的にダメだ。疲れまくってる。