一緒にいたかったから


ネットで話題の「洒落にならない怖い話」をドラマ化したのが放送していて、面白そうだったので、録画したのを遊びに来ていた爆豪と一緒に見ることにした。

最初こそなんでそんなもん見なきゃいけねーんだとかわさわさうるさかったが、今は床に座る俺の隣で、静かにテレビを見ている。

『ぽ、ぽ、ぽ、ぽ……』

明らかにCGな女が、不気味に鳴きながら窓を叩いている。
この話は何度も読んだけど彼女はいまだ俺の元へ来ない。いや別に来てほしいわけじゃないけど。

爆豪は、怖い話が単純にスリル的な意味で好きなんだろう。
テレビを見ていても別段怖がっている様子は見せないし、むしろ俺に寄り掛かって今にも寝そうである。寝てもいいけど蹴らないでほしい、爆豪の爆発的な寝相に巻き込まれたくない。

寝相、というワードで思い出した。そういえばアマゾンで本を買ったんだった。届くのは今日明日だったはず。

ベッドの上に放っていた携帯で確認してみると、配達済の文字。新書だし、下のポストに入っているのかもしれない。ちょうどCMだし取って来るか。

「爆豪ー、俺ちょっとポスト見てくるから」
「んー……」

ダルそうな爆豪から離れて立ち上がろうとしたら、ふいに腕が引っ張られた。

すとんと再び床に座る。
俺の腕をつかんでいる手、その持ち主に視線を合わせた。爆豪はいつもより角度ゆるめの目をテレビに向けたまま、こちらを見ない。

「…………」
「…………」

ひとまず腰を下ろして、再びテレビを注視する。
ひたすらぽぽぽって言うだけの歌が前あったような。どうでもいいか。

再びCMになったのを見計らい、立ち上がろうとする。しかし今度は首根っこを掴まれ、無理やり座らされた。

爆豪はさらに俺の肩に頭を乗せ、立ち上がるのを徹底的に阻止してくる。

「…………」
「…………」

CMではMt.レディがシャンプーとトリートメントの宣伝をしている。残念ながら俺はミッドナイト派だ。

CMが明け、スポンサーの紹介をして、再びCM。落ちは分かっているけど、あえてもう一度立ち上がろうとした。

が、もはや未遂で終わった。爆豪の両手が俺をがっちり捕まえていて動けない。
俺は動くことをあきらめ、テレビを見たままとなりの駄々っ子に話しかけた。

「……爆豪くんや」
「ん」
「眠いならベッド使っていいよ」
「あ? 眠くねえよ」
「じゃあ怖いとか」
「ぶっ殺すぞクソが」
「俺ポスト行きたいんだけど」
「…………」

無視である。
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