生まれ変わっても愛してる


地面から数mのところで、みょうじとかち合う。
すぐ抱き留めて、勢いのままビル側に背中を向けた。
ガラスが割れる音と、あたりの物が壊れる耳障りな音。反対側の壁にぶちあたって、ようやく止まった。秀次のキック力をなめていたようだ。

今は、それよりも。

「みょうじ、おい!」
「……あれ、……米屋?」

ぽかんとした表情で、みょうじがおれを見上げる。どうにもたまらなくなって、細い体を抱きしめた。みょうじは動かなかった。

「みょうじ、……みょうじっ……!」
「……米屋、なんで俺生きてるの」
「おれが助けたからだっつの、……このバカ」
「ああ、そう……。ごめん、迷惑かけて」

何も言えなくて、首を振った。

知っていたのだ。

彼の家が壊れかけていることも、彼が日常的に暴力を振るわれていたことも、……おれを疎ましく思っていたことも。

だけどそれでもよかった。
ただ生きていてくれればそれでよかったのに。

「みょうじ、すげー無理してたんだな」
「……米屋?」
「ちゃんと守るから。もう無理はさせねーから」

引き離されてもいい。
おれの勝手な思いで、これ以上彼を苦しめたくはない。

抱き締めていた体を放すと、いぶかしげな顔をしたみょうじがいる。
笑ってみせたら、奥に秀次が降り立ったのが見えた。

「陽介! みょうじ!」
「あ、三輪。……そうか、三輪隊の担当だったんだ」
「お前、一体何して、」
「あー、まあまあ秀次、助かったんならいいじゃん。そろそろ任務戻らねーと」
「だが……」

言い募ろうとする秀次をなだめて、どうにか納得させる。後で説明を求められるだろうけど、ひとまずごまかしておこう。

先に戻ると言い残して去って行った秀次を見送り、改めてみょうじに向き合った。
気まずそうにしているみょうじに少し笑った。
彼がそんな顔をする必要はない。思い詰めていたことに気づかなかった周りと、気づかせようとしなかったおれが悪いのだ。

全ては、みょうじを独り占めしたかったから。

だけどそれが、彼を苦しめていた。

「みょうじ」
「……何?」
「ばいばい」

遠くに行ってしまっても、俺のことを憎んでも、俺は変わらずみょうじが好きだろう。

突然の別れのあいさつに、彼は首をかしげた。
その顔をかすめるように、かさついてひび割れている唇を奪う。

ばいばいみょうじ、どうか幸せになってくれ。例え生まれ変わっても愛しているから。

prev next
top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -