□生まれ変わっても愛してる
それから、おれは暇を見つけてはみょうじの家に入り浸るようになった。
とはいっても、任務やらなんやらで時間がとられることも多くて、中学の頃程は行けなくなった。
それでも、おれが彼と一緒にいれば、少なくともその時間だけは、みょうじが無事でいられるから。
誰かに相談ということも考えたが、そうしたらみょうじがどこか遠くに行ってしまうのではないかと思ったら、誰にも言えなかった。
「なあ秀次、任務終わったらおれ早抜けしていい?」
「? 別に構わないが……どうしたんだ?」
「ちょっとなー」
今日もみょうじの家に行った。
両親は留守らしくて、家には彼一人。そのせいかわからないが、どうにも、みょうじがいつもより大人しいような気がしていた。
だから早めに任務を終わらせて、夜にもう一度みょうじに会おうと思っていた。
しゃがみこんで、眼下に広がる景色を眺める。現在地は警戒区域の一番高いビル、門ができたらすぐさま仕留められるようにと、月見さんが送ってくれた場所。
景色はいいが、周囲は真っ暗で寒々しい。
「……ん?」
ふと、向かって数百メートルほど離れたビルの屋上に、何か動くものがあるのに気が付いた。
トリオン体で視覚が強化されているから、すぐにそれが人であることが分かった。
それが、よく知る人物なのも。
「……みょうじ?」
「陽介?」
「いや、向こうにみょうじが、」
ここは警戒区域だ。それなのにどうして。
疑問は、みょうじの次の行動で全て吹き飛んだ。
フェンスを乗り越え、わずかな足場に降り立つ。少しでもバランスを崩せば転落してしまうほどの場所に。
「おい、あのままじゃ……!」
「わかってる!!」
ガラにもなく声を荒げて、すぐさま他の建物を足場にしながら、みょうじのいるビルへと向かう。しかし、焦っていたのか、足場にした屋根を踏み壊してしまい、埃だらけの家屋の中に落ちた。
「くそっ! ……みょうじ!」
急いで出たが、その時にはすでに、みょうじの体はビルをなぞるように落下していた。
「みょうじ!!」
弧月を投げ捨て、走る。もう地上までは10mもない。間に合わない。
「陽介、いけ!」
耳元で秀次の声。
それと同時に、背中にすさまじい衝撃。さっきの何倍もの速さで体が飛んでいく。
後ろで足を振り切った格好の秀次が見えたから、多分蹴られたのだ。
だが、タイミングは完璧だった。
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