生まれ変わっても愛してる


これの米屋視点です)



隣に住む友人は、昔から物静かな人間だった。

毒舌ではあったけど、たまにぽつりとつぶやくことが面白かったから、あまり家を出ない彼、みょうじに、おれは構い続けていた。

中学に上がってもその付き合いは続いたが、なぜかみょうじは、もともとインドア派だったのに拍車をかけ、外へ誘っても出なくなった。

「なーみょうじ、たまにはどっか行こうぜ。最近全然外でねーだろ」
「うん。そのうち」
「ちぇー」

そう言って「じゃあ外に出よう」と返されたことはなかったのだが、それでもおれは誘い続けていた。

ベッドの上に無造作に置いてあった本をパラパラとめくっていたら(内容は全く理解できなかったが)、ふとその間に一枚の紙が挟まっているのに気が付いた。不思議に思ってそれを取り上げたが、三つ折りになっているだけの白紙で、中身は何も書かれていない。
正確に言えば、何か書いて消したような痕はあるが、透かしても読めなかった。

「なあ、これって……」

本棚の前で何かしていたみょうじを振り向く。
何か取り出そうとしたのか、手を上に伸ばしたとき、服の袖がずれて、肌が見えた。その腕に、おれは目を見開いた。

つかまれたような青い痣と、黒くて丸い痕。見たこともない傷なのに、タバコだ、とすぐにわかった。彼の父親が、タバコを吸っていた。
俺の方を見ていなかったみょうじは、腕が見えてしまったのに気づいていないのか、どうしたのとなんでもないように聞いてくる。

「……こ、の本って、何書いてあんだ? さっぱりわかんねー」
「あー……わからないならいいんじゃない?」
「気になるわ!」
「じゃあ読んだら?」
「こんな分厚いの読んだら寝るっつの。みょうじ本好きだよなー」
「うん、まあ」

誤魔化せた、のだろうか。

どうするべきか、どうしたらいいのかわからない。何があったと聞いたところで、みょうじのことだから隠すに決まっている。それなら、じゃあどうしたら。

それなりにいい関係を築いてきたと思っていたけれど、改めて突き付けられた事実に背筋が冷える。
みょうじとどう関わればいいか、まったくわからなかった。

「なあ、みょうじ」
「何?」
「……わり、呼んだだけ」
「何それ。腹立つカップルみたい」

ようやくこちらを向いたみょうじが、小さく笑った。

その笑顔は見慣れたもののはずなのに、どうしてか遠かった。

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