幽霊少年の失態


「みょうじ。おめー俺のこと好きなんだろ」
「あ、ハイ。……じゃなくてはっ!? なんで!? 全っ然そんなことないっすよ!」
「オイ今即答しただろうが。シバくぞ」
「すいません超大好きです」

呆れ顔の影浦が、ようやく俺を放した。どてっ、と無様に尻もちをつく俺を鼻で笑ってから、影浦はヤンキー座りで俺の前にかがみこむ。
様になってるなあ、ヤンキーっぽくて。

「誰がヤンキーだ、この幽霊野郎」
「えっ心読まれた!」
「あー。俺ぁな、俺に意識向けてくるヤツの感情が読めんだよ。だからヤンキーぽいとか思ってんのもお見通しだ」
「スリッとまるっとゴリッと?」
「エブリタイムエブリシングだ」

ネタが通じたことに喜べばいいのか、それとも全てばれていたことに悲しめばいいのかわからない。ト○ックいいよね。いや多分そういう話じゃない。

つまり、俺がずっと影浦に抱いていた感情も全てということだ。

「マジかー……。うわ、だったら悪いことしたわ。ゴメン」
「あ? 何がだよ」
「いや、だって気持ち悪いだろ。男に盗撮されて、しかもずっと好きだ好きだって思われてんの知ってたって。だからゴメン」

俺の信条は人に迷惑をかけないこと。
だから影浦が嫌だと思っていたり気持ち悪いと思っていたりするなら信条から外れてしまう。何より、好きな人を困らせるのは本意ではない。

どうしたらいいのだろうか。
考えてから、俺は訝し気な影浦に向かって口を開いた。

「……盗撮はやめるから、頭で思うのだけは勘弁してくれない?」
「……お前、何か勘違いしてやがんな。別に気持ち悪いとは思ってねぇ」
「え、マジで」
「感情が読める、っつーか……相手の感情が刺さるみてーな感じなんだけどよ。怖ぇだの憎いだの、そういうのはムチャクチャ鬱陶しいが」

そう言って影浦は、再び俺の顔に自分の顔を近づけた。
ドドドド、と効果音が出そうなほど俺の鼓動が激しくなる。一目惚れだけに、顔が物凄く好みなのだ。

どぎまぎする俺を見て、影浦が満足そうに笑った。
マスクの隙間からギザギザの歯が見える。見つめ続けて初めて見る表情だった。

「好きだとか、そういう感情は悪くねえ」

鬱陶しい感情を向けてこねえ奴は、好みだと。
キャパオーバーした俺が倒れるまで、あと数秒。

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