眠る君に秘密の愛を


彼はもう覚えていないだろう、高校生にカツアゲされていた中学生がいたなんて。

その時助けてくれた人に憧れて、ボーダーでもないし、学区内でもないのにわざわざこの提携校に入ったことも、きっと知らないだろう。

「当真先輩、……好きです」
「…………」
「助けてもらった時から、ずっと」
「…………」

聞こえていなくていい。
知らないままでいい。
ただ俺が、言いたかっただけ。

そろそろ起こさないと夜になってしまう。
少し残念だけど、足も限界だし鼻をつまんで起こそう。そろっと手を伸ばしたら、俺が無駄に高い鼻をつまむよりも早く、大きい手が俺の手首をつかんだ。

突然の展開に息を短く吸うと、当真先輩があくびをしながら起き上がる。
俺を掴んでいるのと反対の手でアイマスクを外すと、彼は俺を振り向いて、にやりと笑った。

「……お、おきて、たんですね」
「結構前からなー。寝てる間に告白かよ、なかなかせこいな」
「せこい、ですかね……。いや、でも、あの。先輩言ってたじゃないですか、外れる弾は撃たねーって……だから、えっと」
「成功しねーだろうから言わないってか? バーカ。お前は数撃ちゃあたるっつー戦法でいきゃいいんだよ。一発は当たる」
「……じゃあ先輩はその一発に当たってくれるんですか」

やけくそで聞くと、当真先輩はバカにしたように鼻で笑って、俺を引き寄せた。
しびれた足に力は入らなくて、先輩に突っ込むような形で倒れ込む。

「俺はスナイパーだからな。当たるより当てる方が得意なんだよ。命中しただろ?」

銃の形になった人差し指が、俺の心臓をつつく。

気障ったらしい言い回しだ、と鼻で笑い返してやりたかったけど、そんな余裕は既に俺には存在していなかった。

お題:確かに恋だった


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