眠る君に秘密の愛を


だんだんと赤くなっていく空。流れていく雲。遠く5時の鐘が聞こえてくる。
ああ、いい夕暮れだなあ。

「……ぐぅ」
「当真先ぱーい……」

膝にコイツがいなければ。


元はと言えば、俺が悪いのだ。

前に当真先輩に教えてもらったネコスポットに行って、昼飯をネコと食し、そのまま昼寝してしまい。
起きた時にはもう夕方だし、なぜか投げ出した足を枕にして、アイマスクをした当真先輩が眠っているし。

しかも起こそうとしても起きないから、さっきから体勢が変えられないままだ。

そろそろ足もしびれて来たし、見たいテレビもあるから帰りたいのだけど。

「当真先輩?」
「…………」
「当真せんぱーい。実は起きてるんでしょ?」
「…………」
「…………」

返事がない、ただの屍のようだ。
いっそ屍だったらポイして帰れるのに、生きているからそうもいかない。

よだれまで垂らして眠っているその顔を覗き込むが、やはり起きる気配はない
。鼻でもつまんだら起きるかと思って手を伸ばすも、少し迷って結局やめた。代わりにきちっと固められた髪を指先で触る。

今時リーゼントかよとも思うけど、不思議に似合っているのだから仕方がない。

「当真先輩」

髪から頬へ、頬から首へ。首から今度はどこだろう。
そうやって指を動かせたらきっと気持ちがいいだろうけど。

ちょっとだけ髪を触ったら、俺はすぐ手をひっこめた。

同性の先輩に抱くには不自然な感情を抱いてしまったのはいつからだろうか。

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