授業中に屋上で


影浦くんに連れ出されるのはいつものことというか、最近どうも慣れてきてしまったのがむなしい。

クラスが違うから授業中は基本的に安心なのだけれど、たまに連れ出されることもある。
村上くんは仲がいいんだなというほんわか目線で見てきて、先生には言っておくよと退路を(意識せずに)断ってしまう。
望みは当真くんか穂刈くんだけど、二人とも面倒なことに関わりたくないらしく、骨は拾っておくぜなんて顔文字付きでメールが送られてきた日には絶望しかできない。

今日は小テストだったんだけどなあ、とため息をつきながら、僕を座椅子のように扱う影浦くんをちらりと見やる。

ぐあーとギザ歯をさらして、まるで猫のような大あくびをする影浦くんは、感情受信体質なんていうサイドエフェクトを持っている。
自分に向けられた感情が刺さるようにして感じられる、というものらしく、負の感情ほど不快に感じるそうだ。
しかし彼は、僕の感情が刺さるのは、なぜかお気に入りらしい。詳しくは知らないけど。
そばにいるとラクなのか、こうしてしょっちゅう引っ張り出されて、座椅子にされたりするのである。


「おい、みょうじ」
「えっ、はい」
「さみい」
「……そりゃ屋上だから……」

風が冷たくなってもうだいぶ経つ。
なのにどうして、屋上に行きたいなどと言い出したのだろうか。僕は直に座っているから冷えがしんしんと襲ってくるんだけど。

「なんかカイロとか持ってねーのかよ。女子力たけーだろお前」
「持ってないよ……。ていうか女子力高いってなに」
「たけーだろ。自分で弁当作るし。仁礼なんかぜってーできねーぞ」
「昔からやってるからできるだけだよ。仁礼さんだってやり始めればできると思う」
「ふーん。そういうもんか。……それはそうとしてさみいな」
「中戻る?」
「イヤだ。あのハゲ野郎うっとうしいんだよ、たかが一万点没収された程度でグダグダ言いやがる」
「…………」

暴力行為が目に余るという理由で、影浦くんは一万点を没収され、B級に格下げになった。そういうことは教師にも連絡がいくので、嫌な先生だと、それをちくちく言ったりもする。彼が言っているのはそういうことだ。

僕は一万点とられたら、点数全てなくなるんですがそれは。
そこをたかがと言ってしまえるのが、影浦くんらしいと言えばそうだけど。

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