□幸せそうに、ほころぶ笑顔
玉狛はそういうことも教えるんだろうか、とか考えていたら、なまえさん、と名前を呼ばれた。
「俺のこと、好きですか」
「え、好きだよ。何いきなり」
「それじゃあ、大好きですか」
「……話聞いてたんだろ?」
「でも、ちゃんとなまえさんの口から聞きたいっす」
めずらしく甘えたことをいう京介に驚いていたら、ぐりんと体が回転して、屋上のコンクリートに押し付けられる。
赤くなりはじめた空と、京介の整った顔。
なんだか現実味がない。瞬きしたら全部夢だったとか、そんな落ちはないよな。
ないとは思うけど、もしそうだったら困るので、ちゃんと口にすることにした。
「大好きだよ、京介」
京介の耳が、じわじわと赤くなっていく。まるで告白してくれた日のように。
それが顔にまで伝染していったところで、京介は無表情を崩して、ゆっくりと笑顔を浮かべた。
照れくさそうな、それでいて幸せそうな笑顔は、出会ってから初めて見る笑みだった。
「おれも、なまえさんのこと、大好きです」
「うん。ありがとう」
「……キスしてもいいすか?」
屋上なら、たぶん誰も見ないだろう。
何より、大好きな恋人が珍しくおおっぴらに甘えてくるのなら、それにちゃんと応えたい。
「いいよ」
許可を出すと、とろけそうな笑みを浮かべる。
顔がいい奴がやると効果も倍で、俺の心臓がさっきよりももっとうるさくなる。聞こえてしまいそうだとバカなことを考えて、それはきっと京介も一緒だろうことに気づいた。
京介の顔が下りてくる。俺はそっと目を閉じた。
お題:immorality
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