幸せそうに、ほころぶ笑顔


「ごめんなさい」
「即答!?」

一転して目を向く彼女。
目はカラコンだったらしく、微妙に瞳からズレている。そこまで驚くことだろうか。

「え、な、なんで!?」
「いや、俺付き合ってる人いるんだよね。だからゴメン」
「えっ……うそ! みょうじくんずっと見てたけど、ぜんぜん、そんな人いなかったよ!」
「あんまり人目に付きたくないんだって」

男だしな。

しかし彼女はそれでは納得しないようで、嘘だ嘘だと繰り返しながら俺に迫ってきた。

見た目はせっかくかわいいのに、言動が怖い。

「ぜったい、みょうじくん騙されてるよ! だってどういう人!? 写真見せてよ!」
「えっそこまで怒る? あと写真はNG」
「なんで? もしかして見せたくないくらいブスなんじゃないの? 私のほうが絶対かわいいもん!」
「自分で言うのかよ!」

騙されてる、なあ。
確かによく嘘はつくけど、俺に告白したのはウソじゃない。あと見た目も悔しくなるくらいイケメンだし。先帰っていいって言っても待とうとしてくれるし。二人だけだと結構甘えてきたりして可愛いし。

「あれ、やべえ。彼女力高くね?」
「何の話よ!」
「あ、ごめん俺の付き合ってる人。まあとにかくゴメン、俺あの子のこと大好きだから。諦めてください」
「なんでっ? 私じゃダメなの? その子より絶対、みょうじくんのこと好きだよ!」
「いや、俺を好きかじゃなくて、俺があの子のこと好きなんだよ。だから付き合えない」

押し問答はしばらく続いたが、結局ボブっ子は泣きながら「お幸せに」と去って行った。
なんだかどっと疲れた気がする。やっぱり京介に待っていてもらえばよかったか、あのもさもさ頭に癒されたい。

「はー……帰るか」

肩を鳴らして、先ほど女子生徒が通り抜けた通路を通ろうとしたら、後ろから何かに抱きしめられた。突然のことで思わず固まる。
だが、見慣れた手が目の前にあるのを見て、ようやくそれが誰かわかった。

「きょ、……京介!? 帰ったんじゃ……」
「すいません、待ち伏せしてました。貯水槽の陰で」
「お前忍者かよ! 全然気づかなかった……」

気配消しすぎだろ。

「知ってたのか?」
「知りませんでしたけど、なまえさんが屋上行こうとしてたので、先回りしました」
「うおお……玉狛すげえ……」




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