スネて丸まった背中


「みょうじ」
「ん?」

ちょいちょいと手招きされて、言われるがまま近寄る。示された通り奈良坂くんの隣に座ると、肩にきれいに切りそろえられた頭が乗っかった。

「ど、うしたの、いきなり」
「声裏返ってるぞ。……俺だってたまには甘えたくもなる」
「……あ、……うん」

奈良坂くんがデレた。鉄面皮で成績優秀でクールな、あの奈良坂くんが。

「せっかくの休みなんだから、みょうじからラインくらいは来るかと思ったら来ないし。家に来れば特に忙しそうでもなくごろごろしているし。……相変わらず気遣いが空回りしてるぞ」
「だ、だって、久しぶりの休みなら、のんびりしたほうが」
「のんびりするのも悪くはないが……。おれはみょうじと一緒に過ごしたい。その方がゆっくりできる気がする」
「……ご、ごめん?」
「謝る気があるならたけのこをよこせ」

んが、と口をあける奈良坂くんの口に、たけのこを放り込む。
飲みこんだら、今度は視線が苺のあたりをさまよったので、そっちをつまんだ。

「ハイ」

口の中に押し込もうとしたら、小さな唇がそれをおしとどめた。不思議に思いつつ手を離すと、奈良坂くんの顔がこちらを向く。
口に小さなお菓子をくわえたままで。

「ん」

「いやいや『ん』って何! いいよ食べなよ!」
「…………」

奈良坂くんは何も言わないが、目が言っている。「取らなきゃ狙撃する」って。

照れくさいどころの話じゃないけど、連絡もせず放っておいたのは逆効果だったらしいし、滅多にデレない奈良坂くんがデレてるし。
甘えたくもなる、と言っていたから、彼の思うとおりにした方がいいのだろうか。

「し、……失礼、します……」
「ん。はやくほへ(早く取れ)」

顔を近づけると、奈良坂くんが目を閉じる。
チョコの部分に歯をたてると、唇どうしが触れ合った。そのまま引き抜けばいいのに、柔らかな感触にどぎまぎしてしまって、石のように固まる。
焦れたのか、奈良坂くんが舌で残りを押し込んできた。

それをしっかり受け取って食べても、味がわからない。顔が焼けそうなくらい熱かった。

それを見て奈良坂くんは、満足そうにようやく笑う。
今度は自分でたけのこを取り、再び口にくわえた。

「……え?」
「まだあるぞ。あとみょうじもおれにやれ」
「え、ちょ、」
「まさか、一回で終わると思っていたのか? ……甘えさせてくれるんだろう?」

にやり、と笑う彼に、先ほどまでの拗ねた空気はない。
すっかり機嫌は直ったようだ。

それはよかったと思うものの、そのあと僕は、買ってきたたけのこを食べきるまで、相手に口で渡すという、ヘタレには難易度の高い羞恥プレイをさせられることになったのだった。

お題:immorality


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