□スネて丸まった背中
「……あの、奈良坂くん?」
「…………」
「……な、奈良坂さん?」
「…………」
どうしよう。
奈良坂くんが、動かない。
もちろん寝ているわけじゃないし、ましてや死んでいるはずもない。ただ転がっているだけだ。僕に背を向けて。
休日だからと部屋でごろごろしていたら、急に奈良坂くんがやって来て、驚きながらも部屋に案内したらこのありさまである。落ちていた丸いクッションを抱え込んで、うんともすんとも言わずに寝転がっている。
さすがにどうしていいかわからない。
「……あの、奈良坂くん。僕ちょっとコンビニ行くから、えっと、何か欲しいのある? たけのこ?」
「……期間限定」
「う、うん、わかった、買ってくるね……」
小一時間もしてようやく発した言葉が「期間限定」て。
空しくなりながらも、僕は家から自転車で数分のコンビニへ急いだ。
「ただいま」
期間限定たけのこと通常たけのこ、苺たけのこを買って、部屋に戻る。
奈良坂くんは起き上がってはいたものの、やはりこちらは見ていなかった。これは、僕が何かしたのか。
それでも最強アイテムがあるからと、袋の中身をまさぐる。
「奈良坂くん、はい」
「……ああ」
期間限定を手渡すと、ようやくこちらを向いてくれた。
無表情というか、いつもよりも不機嫌そうな顔でビニールをはがし、箱を開いている。どうせ食べるだろうと、僕は残りのものも剥いてしまった。
突然のたけのこパーティに、奈良坂くんの機嫌が、若干上向きになったように感じる。
聞くなら今だと意を決し、聞いてみた。
「あ、あのさ……何か怒ってる?」
「……怒ってはいない」
「えっ嘘だ」
「嘘だな」
「あ、やっぱ嘘なの……」
もごもごとたけのこを咀嚼しながら、奈良坂くんは平然とそんなことを言う。どうにもからかわれている感がぬぐえないが、怒っているとしたら、それは何にだろうか。
ここ最近の出来事を思い出してみるも、怒られるようなことはしていないはず。
だってそもそもが、ここのところ三輪隊は忙しくて、メールのやりとりすらしていないのだ。
今日は久しぶりに休みー、と米屋くんがツイッターでつぶやいていたから、それなら邪魔しない方がいいと思って、連絡もしなかった。
そんな僕の気づかいは知らないとばかり、今日こうしてやってきたわけだが。
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