ちらり、うかがう目


「……んで、あとは剥ぎ取りだけだったのに、出水先輩がタル爆弾爆発させて!! 残留メテオラに注意とかわらってたけど、あれ先輩がペイントボールで爆発させたんですよ! 米屋先輩も笑ってるし、煙玉で佐鳥の射線邪魔しまくるし!!」
「佐鳥はかわいがられてるねえ」
「嬉しくない! 佐鳥は繊細なんですよ!」

にぎやかに喚く佐鳥の口に、机の上のアーモンドチョコをひとつぶ押し込む。
むぐ、と間抜けな声をあげて、押し込まれたチョコを咀嚼する、自称敏腕スナイパー、他称土下座返しスナイパー。

食べ終えてから、佐鳥は恨めし気にソファの隣に座る俺を見上げた。

「ひどいよ、みょうじさん……。ここは大変だったねって慰めるとこじゃないですか?」
「んー、そう言われても。嫌がってるなら言うけど、実際ちょっと楽しいでしょ?」
「そりゃまあ……。……もう」

佐鳥は勢いをつけて俺に倒れこみ、そのままずるずると下に下がっていく。最終的に俺の膝の上に頭を落ち着けると、テーブルの上にあった俺の手を取って、自分の指と絡めた。

ボーダーの顔である佐鳥の手は、サインを書いたりすることも多く、(勉強はしないくせに)ペンだこがある。
指でその部分をなぞると、ちら、と佐鳥はこちらに視線を向けた。

「そーいえば、この間嵐山隊でプロモ撮ったんですよ。そしたら、今結構テレビ出てる、モデルの女の子が同じスタジオ来てて! ファンなんですって握手しちゃいましたよ!」
「嵐山がでしょ?」
「……はい……」
「そっかー。まあ佐鳥って3枚目キャラだもんね。しょうがないない」
「ひどっ!」

泣き真似をする佐鳥の頭を空いた手で撫でてやる。
年下の恋人はあきらめたようにため息をつくと、再び体勢を変える。今度は体を起こして、大胆にも俺の足の上に乗り上げてきた。
そして俺の頭を抱え込むように抱き付き、ぽつりと何事かつぶやく。

「なに?」
「みょうじさんって、……あーーもう、いいです、なんでもない! ばか! あほ!」
「ひどいなー。これでも嫉妬はしてるよ?」
「えっ」

固まる佐鳥を抱え上げて、視線を合わせる。
きょとんとしている間抜け顔に思わず笑いがこぼれた。嫉妬してくれないんですね、ってちゃんと聞こえてたよ。

さっきから、他の人とからんだ話ばかりして、その後で必ずこちらをうかがっていた。その意図に気づかないほど鈍感でもないけど、面白いから放置していたのである。

「そんなに妬いてほしい?」
「……だって、おればっかみょうじさんのこと、好きみたいで。なんかやだ」
「だって、佐鳥とこうして一緒にいられる時間少ないのに。なのに嫉妬嫉妬で、機嫌悪くなって嫌な空気になったら損でしょ?」

「………………」

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