寝言は寝て言え


「みょうじ先輩、帰りどっか行きません?」
「あ、ごめん。俺これから大学の説明会行くんだわ」
「え、マジすか。じゃあ仕方ないから結婚します?」
「ごめん、バナナの皮で滑って転んで?」

やっぱだめかあ、と明るく言ってのける後輩を見てため息をつく。
出水公平というこの後輩は、俺に一目惚れしたと言ってはばからない。

ネタだろうネタだろうと思っていたのだけれど、この間うっかり一緒に帰ったとき、帰り道で突然キスされて以降、俺はこいつのことを信用していない。

「ていうか出水、17だから結婚できないじゃん」
「1年くらい待っててくださいよ、そしたらもう一回プロポーズするんで」
「いや1年待ったら俺普通に大学生だけど。そしてゆるふわ系の彼女を作るんだ」
「え、もしかしてまだ柚宇さん諦めてないんすか?」
「あの子はどちらにしろ無理だったわ、ゲームに付き合えん」

ボーダーでもない俺がどうして一つ下の出水に絡まれるようになったのかというと、同じクラスである国近に片思いしたからである。
情報を集めるために出水に近づいたが、あえなく玉砕した。んじゃ俺と付き合いましょうよと、たわけたことを言い出したのもその頃だ。

「説明会って、大学の? どこ受けるんですか?」
「んー第一志望は決まったんだけど……第二第三がなあ。結構第一の志望度強いから、正直どこも同じに見えるっつーか」
「へー。おれみょうじ先輩は就職するんだと思ってました。おれの嫁に」
「いや、俺できれば愛する人を養いたいわ」
「おれのこと幸せにしてくださいね」
「あ、おひとりでどうぞ」

出水は息をするように軽口をたたく。
たまに鬱陶しくは思うものの、後輩に慕われて悪い気はしなかった。


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